My favorite Camera No.4

Posted: Sat, 23 Aug 1997 23:51:34 +0900
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 みなさんこんばんは，野沢＠きつれがわ です．

    野沢＠古カメ党の “思い入れのカメラ”コーナー No.４その１

４回目の今夜は，以前からお約束した通りオリンパスのカメラです．
先日，ある方に「野沢さんはペンタックス好きっすね」と言われてしまいました．当  
たりです．ゾウさんよりもっと好きです．
ワンテンから中判まで“一眼レフ一筋”（コンパクトも出してはいますが）のその姿  
勢にまず好感を持ちます．さすがは“一眼レフのカロッツェリア”だと思います（こ  
れは外したみたいですね）．
今にきっとＡＰＳの一眼も出してくるに違いない，と信じています．もし出さなかっ  
たら“一眼レフのパイオニア”の看板は降ろしてもらいますっと（もっとも，私はＡ  
ＰＳには興味ありませんが…）
実は，オリンパスもかなり好きで，私のイメージでは，カメラの小型化に闘志を燃や  
すメーカー，としてインプットされているのです．
ハーフ判の“ペン“”ペンＦ“フルサイズの“ＸＡ”“ミュー”といった具合にカメ  
ラ史上に残る小型の名機を数多く，しかもシリーズ化して出していますが，これはも  
う“小型軽量化への執念”と呼ぶべきものでしょう．ここいら辺がどうも“重カメ嫌  
い”の私がオリンパスに魅せられる最大の理由です．
  以前ヨドバシで“ミューⅡ”をいじってみましたが，これが本当に３５ｍｍフルサ  
イズのカメラ？と疑うほど驚異的に小さかったです．
なにしろあの“ＸＡ”より小さいボディーにストロボを内蔵し，巻上げ自動でオート  
フォーカス化してしまったわけですから，これはほとんど“病気”ですよオリンパス  
さん！（病気の私に言われたくない！って，ごもっとも）
ところで，後醍醐天皇ってご存知ですよね．高崎の“陛下”のご先祖筋にあらせられ  
る，やんごとなき御方.......
しだいに力をつけてきた武家中心の政治から，本来の天皇主導の政治に戻さんと“建  
武の中興”をおこなった．と歴史の教科書に載っていますが．
“思カメ”を読むと歴史の教養も身につく様になってます．
では，カメラ界の後醍醐天皇といえば？
はい，“思カメ”読者ならもうお分かりのことと思います．
そういうわけで，オリンパスＯＭ-１をとりあげてみます．
（いやー，いつにもまして長―いイントロでした．疲れたでしょ．書いてる私もです  
．こういう時は本文は大した事ないので，期待せずに読んで下さい）

    オリンパスＯＭ-１，元の名をＭ-１といふ．

Ｍ-１が生をうけた‘７２年というのは，前年にキャノンＦ-１，ニコンＦ２という当  
時を代表するフラッグシップ機が登場して，まさに一眼レフカメラの黄金期とも呼べ  
る時代でした．
その頃のカメラは，まだ耐久消費財と見なされ，機能を増すごとに大型化して行き，  
高級で高性能なものほど大きく重いのは当たり前，それこそがステータスとさえ思わ  
れていました．
そこへ，ちょうど百武彗星のごとく突然現れたのがオリンパスＭ-１でした．
その小ささといったらもう筆舌に尽くし難いくらいで，それはそれは大変なショック  
でした．新聞か雑誌の広告で実物大の写真が掲載されたのを穴が開くほど見ていた記  
憶があります．Ｍ-１の写真の上に自分のカメラを重ねて大きさを比べたりして，た  
め息ついたりしながら.......
これはもう“大化の改新”か“建武の中興”以来の出来事かと........
驚異的に小さくできた技術的ノウハウについては，カメラを分解するとよく理解でき  
る，ということでその記事がアサヒカメラの８月号（いま本屋さんに並んでいるのは  
９月号です）に載っていますから，興味のある方はそちらをお読みください．
私が今でも感動してるのは，超小型のカメラそのものよりも，当時の常識を破ってこ  
のとんでもなく小さな一眼レフを造ろうとしたコンセプトにです．
「ものには，それにふさわしい“大きさ”というものがきっとあるはず」と以前に書  
きましたが，Ｍ-１の開発者も当時きっとこう考えたに違いなく，このままではカメ  
ラはどんどん肥大化してしまう．これではいけない．本来のあるべき大きさに戻さな  
くては．と危機感を持ちながら苦難の開発に挑んだことでしょう．そう，あの後醍醐  
天皇のように！
ここで，メーカーの“カメラの大きさ”に対するこだわりが良く表現されている文章  
をＭ-１のカタログから抜粋してみましょう．（前回のＦ-１の時といい，こんな古い  
カタログをよくとっておいたと，我ながら感心してしまいました．）

  ［画期的な小型軽量化が発揮する抜群の機動力］

   身のまわりのものすべてコンパクト化されている現在，
   一眼レフだけが依然として「大きく」「重く」「ぶ格好」
   な姿で取残されています．この一眼レフの欠点は，高級
   機だから仕方がないものと，今までなおざりにされてき
   ました．あのごろごろした大きさと，肩にくい込む重さ
   に，不愉快な経験をされた方はきっと少なくないはずで
   す．人間が日常使用し持ち歩く以上，使い易い大きさと
   携帯に便利であることが，カメラの最も大切な基本的条
   件になります．

パチ，パチ，パチ........（拍手をおくる音です）

実際にはもっと小型にすることが可能だったようです．
      「ボディはあえて横幅に余裕を持たせ，構え易さを強調
        しました」（Ｍ-１のカタログから抜粋）

カメラとてただやみくもに小さければ良い，というわけではなく，“本来あるべき大  
きさ”“構え易い大きさ”とはいったいどのくらいの大きさなのか？
ここで開発チームは試行錯誤するわけです．既製のカメラを手に取ったり，モックア  
ップを作り試してみたりと.........
まるで見ていた様に書いていますが，当然見ておりません．私は小学生だったはずで  
す．でも，目に浮かぶ様です．手に取る様に分かる，といっても過言ではないでしょ  
う．なにしろ彼らは私の“同志”と呼びたいぐらいですからね．
しかし実際には，範となるカメラがあって，目指すべき大きさは決まっていたらしい  
んです．その“我が師”とも言うべき理想の大きさのカメラとはいったい何だったの  
か？
それは，かのバルナック型ライカ（スクリューマウントの）だったんですね．
アサヒカメラだったか，対談の席でオリンパスの米谷氏がそう言ってらしたのを読ん  
だ記憶があります．その時は，そうかライカってＯＭ-１の大きさなのか，としか思  
いませんでしたが，ずっとあとになって，本家ライカのよく手になじむ，握り心地の  
良さを知るようになってから，やっとそのことばの真の意味が理解できました．
Ｍ-１が手本にしたのも無理はないな，と．
実際にＭ-１とライカⅢｆの底カバーをくっつけてみると，形状は違いますが長さは  
ぴったり同じでした．底から巻上げレバー上端までの高さはⅢｆの巻上げノブ上端ま  
でとほぼ同じで，Ｍ-１のペンタ部のとんがりを無視すれば全体としてはほとんど同  
じ大きさと言えるほどです．
ライカといえば，Ｍ-１の名称に関するクレームの件を忘れるわけにはいきません．  
これはかなり有名な話でしたが，Ｅ.ライツ社からのクレームによってＯＭ-１に名称  
を変更した，ということだけで，事の真相について詳しく語られたことはなかったと  
思います．そこで独自の推測を交えてこの謎に迫ってみることにします．
ライカＭシリーズといえば当時からあまりにも有名で，オリンパス社がそれを知らな  
かった，などということは絶対に有り得ないわけです．それなのに，なぜ同じ名前で  
出したのか，というのが今回最大の疑問のわけですが，二つのケースが考えられると  
おもいます．
ひとつは，ライツ社からクレームは来ない，と確信があった．
これはちょっと考えられません．もしそうだとしたら，おめでたい，としか言いよう  
がありません．ライツと特別な約束でもあれば別ですが...．
二つ目は，クレームがつくことをはじめから予測していた．
これは普通，クレームがきても勝つ自信があった，と解釈できますが，ほんとうに勝  
てるだけの根拠があったのでしょうか？
オリンパスＭ-１が登場した年，ライカＭ１はその８年前に生産中止となっているの  
だからいいじゃないか，というのは話になりませんね．ライツではＭ２，Ｍ３，Ｍ４  
も存在し，当時はライカＭ５を生産していました．オリンパスだってＭ-１のあとに  
は当然Ｍ-２，Ｍ-３が出て来ることは予想できますから．
では，あなたはＭ１，わたしはＭ-１，ハイフン（と呼ぶのかな？）が入るからいい  
じゃないか．それに，おたくのはレンジファインダー機，うちのは一眼レフでカテゴ  
リーも違いますから．と言うのはどうでしょう．
これも無理がありますね．発音すればどちらも“エムワンと言うカメラ”なんですか  
ら．
これはどう考えてもオリンパスに勝ち目はない，と思ってしまいます．
まあ，実際にその通りクレームついたんだから，そう思うのも当然ですかね．
でも，これで納得しちゃったら単なるオリンパスの失敗談で終わってしまうので，フ  
ァンとしてはいささか寂し過ぎます．
こういう時は“急がば廻れ”，前の二つ目のケースに戻ることにします．
“クレームがつくことをはじめから予測していた”場合，ほかに考えられる事はひと  
つしかありません．“Ｍ-１からＯＭ-１に改称することを最初から計画していた”と  
いうものです．
なにを馬鹿なことを，とお思いでしょうが，そう言わず聞いてやって下さい．

  証拠１．改称のための経費に見合うメリットがあった．
これは宣伝効果です．ライツからクレームがついた，といえばもうそれだけで話題に  
なります．事実，各カメラ雑誌はもとより新聞（日経だったかな？）記事にもなりま  
した．ある雑誌では，当初ライツでは黙認していたが，Ｍ-１のカメラとしての出来  
の良さと予想以上に販売が好調なために，黙っていられなくなり抗議を申し入れた，  
などと書かれたのでもう効果満点！
改称するには，ボディ刻印，カタログ，取説，それにパッケージなどを新しくしなけ  
ればならず費用はバカにできないと思いますが，ＯＭ-１への改称はＭ-１発売開始か  
ら１０ヶ月後なので，初期費用の元を取るのは無理としても全くの無駄にはならなか  
ったはずで，総合的に見た“費用対効果”は抜群だったと言えるのではないでしょう  
か．
  証拠２．Ｍ-１の名称の由来が明かされていない．
“Ｍ”が“小さい”ことを意味する言葉の頭文字かな？と想像はしてましたが，カタ  
ログには一切その説明がありません．由来を派手にぶちかましちゃうと改名する時カ  
ッコ悪いですからね．

どうですか？“改称計画説”は説得力あるでしょう．
サーバーに引っかかるほど長文になってしまったので，
この続きは「思カメ」No.４その２，ということで．
別な物的証拠も出て来ますから，おたのしみに！
では．