Posted: Wed, 10 Sep 1997 00:11:18 +0900
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みなさんこんばんは,野沢@きつれがわ です.
例のウィルスや中古市の話題も一段落したようですので、ここいらでまた“思カメ”
コーナーをおっぱじめたいと思います。
前回の“思カメ”はオリンパスOM-1の前編をお届けしたのですが,反響は全く無く寂
しい思いをしてました.
そういえば,私が在学中に見かけたOM-1ユーザーは割と少なくて,建築学科のクラス
メートでは,早稲田の理工を蹴って千葉大に入った秀才矢嶋君(この人のはM-1でし
た)と,土浦一高出身でワンダーフォーゲル所属の小泉君の二人だけだったし,星見
会にいたってはたった一人しか覚えていません.(いいカメラなのにどうしてユーザ
ー少ないんだろう?)
こう回想していたところに,相模原市の宮崎さんからこんなお便りをいただきました
.
>野沢さん、御無沙汰してます。家のOM-1は現役で子供の運動会のと
>きのみ活躍しています。持ち主が無精で露出計の電池の交換を忘れても
>、ちゃんといい写真を取ってくれます。(ただし、いい天気といいフ
>ィルムといいカメラのおかげですが)
>カメラシリーズ、楽しみにしております。
>
>宮崎幸一 MXE06055niftyserve.or.jp 97/08/27 (Wed) 00:10 PM
> http://WWW.asahi-net.or.jp/HA4K-MYZK/
いやー,大貫くん今でもOM-1使ってくれてるんですね.ありがとう.
私がお礼言うのもおかしいですが,何かこう嬉しくなりますよね.
ニコンばかりが幅を利かす当時の星見会にあって,唯一OM-1を選択したあなたの審美
眼には敬服いたします.
まさに“カメラ選びの達人”と言えると思います.
冗談はこれくらいにして(ガクッ,と音が聞こえた?),さっそく本文に突入します
ね.
“思カメ”No.4続編のはじまり,はじまり
“うちの仏はん,ちさいけど...,ほんまやったら国宝もんなんやがなあ.....”
小さな仏像を前にして,お寺の住職がくやしそうにこう呟くシーンが印象的だったO
M-1のTVコマーシャル.
これ覚えてはるお方は,えらい歳いってはるのとちゃいますか?
歳のはなしには触れない事にして,とにかく,OM-1は小ささこそが最大のセール
スポイントでした.
一般の一眼レフでボディ1台,レンズ3本持っていくところを,OM-1ならばボデ
ィ2台,レンズ5本携帯できる,とその機動力をアピールしていました.この小型軽
量思想はボディだけでなくレンズ,他のアクセサーにまで貫かれており,不要な時は
外しておけるホットシューにまで開発者のこだわりが感じられました.
徹底した小型化のなかにも,小さくしなかったどころか逆に大きくして操作性を向上
させたのが各種レバー,ボタン,ダイヤル類です.確かに操作性は悪くありません.
ミラーとシャッターのショックの少なさも気分の良い点です.なんかこうダンパーが
ピシッと効いているクルマの様で,とても安心感があるんです.
シャッター音も上品で私は好きです.ペンタックス系のパシャコーンていう朗らかな
音もそれなりにいいですが,こういう静かで品がある音はもっと好きです.
気になる点をいくつか上げると,まず,巻上げフィーリングです.申し分ないと言う
人もいますが,もっと滑らかな機種もあるのでそれらと比較するとやや“ざらつき”
が感じられます.
外皮が剥がれ易いのにも困ってしまいます.
もっとも,コンタ139Qとは次元が違うほど些細な剥がれではありますが(これは
139Qユーザーにしか分からぬ深刻な問題です).
合成皮革が厚いことと接着剤の問題かも知れませんが,端部がめくれやすいようです
.2.1N.2N.2SPあたりまで同様でした.現行機種では改善されているとは
思いますが.
それと,私が最も気になる点は,やはりあの高倍率で視野が広すぎるファインダーで
す.普通のカメラが21インチTVだとするとOM-1は29型の画面を見ているよ
うで,確かに迫力があって細部までよく見えるのですが,視野全体を見るためにはぐ
るっと見廻さなくてはならず,なぜか落ち着きません.まるで画面の中に自分も一緒
に入っている様な気がして来て,どうも客観的には見れない感じです.視聴者参加型
のファインダーとでも名付けておきましょうか.これだけ視野が広いと、その内側に
くっきりとしたブライトフレームがあったらなあ、と叶わぬ思いを抱いてしまうのは
例のウィルスに冒されているせいでしょうね。でも,ビーチなどで望遠レンズを付け
て目に栄養を与えるのには最適かもしれません.
あと,これは“慣れ”の問題でしょうが,シャッターダイヤルがニコマートと同じで
レンズマウント部にある点に関しては,オーソドックスな位置に慣れているとちょっ
と使いずらいかな,と感じます.
ニコマートやOM-1でスタートした人には全く問題ないはずですし,左手で操作で
きることを考えるとチャンスにも強いわけですが......
ところで,OM-1はどんな人に似合うと思いますか?
私の勝手なイメージでは,山好きの人がタオルと一緒に首から下げている,というの
がぴったりな気がします.夏休みに皇太子さまが地元の古老の案内で那須茶臼岳にお
登りになられた,と地方紙のトピックス欄に掲載される写真のなかに,さりげなく首
から下げられたOM-1が小さく写っていたりしても悪い気はしませんね.(後醍醐
天皇の家系だから?)
「佐藤さん,こんど山に行く時は,私の代りにこのOM-1持って行ってくださいま
す?」凛子
このOM-1のヒットに続いて,OM-2,-1N,-2N,-2SP,-3,-4とシリ
ーズで登場してくるのですが,途中からは入門機としてOM10,20,30などの
いわゆるOM二桁シリーズも発売されました.
ハイ,またまた注意深い読者の方は気付かれましたね.この二桁シリーズには“ハイ
フン”が付いていないことを.......
実は,前回予告した“M-1クレーム事件”の真相を探る上での重要な物的証拠とい
うのがこの“二桁シリーズのハイフン”なんです.
カメラメーカーが上級機,中級機,入門機を出す場合,番号の“桁”を変えて区別す
ることはよくある事です.ニコンF4とF90,70とか,FM2とFM10,ペン
タックスではMZ-5とMZ-10などです.
だけど“桁”と“ハイフン”を併用してまで区別した例はまずありません.
OM-1とOM10,オリンパスは“ハイフン”の有り無しにやけにこだわるなあ,
なにもここまでしなくったって......
そう,あの事件さえ無かったら,こんなにこだわる事も無かったはずです.
オリンパスは,M1とM-1は同じだとクレームをつけられた事がよほどくやしかっ
たに違い有りません.それで,二桁シリーズを出す時に,今度は逆に“ハイフン”を
外してそのことをアピールしたかったのでは........
世界一小型軽量な35ミリ一眼レフに“M-1”という名を冠したかったオリンパス
の思い入れでしょうか.
OM-1と呼び慣れた今では,もうそんなことどちらでもいいだろう,とお思いの方
もおられるでしょうが,“M-1”と“OM-1”では大違いです.だって,もしあの
キヤノンF-1がキヤノンCF-1,ニコンF5がニコンNF5だったら,なんか間延
びしてて締まりが無いと思うでしょ.
“M-1”にこそ開発者の思いがストレートに表現されていて,やはりこれしか無い
,と私は思います.
カメラの気持ちが痛いほど分かる私としては,やはりM-1と呼び続けてやりたかっ
た.(そういえば,前出の宮崎くんも元は大貫くんと呼ばれてました.“でも,オレ
達にとっては今でも大貫だがや”と先日名古屋のさる御方が申しておりました.同感
)
では,改称しないで済む方法は無かったのでしょうか?なんとかしてライツを丸め込
む手段が....
私なら,ライツにこう言いますね,正直に.
「当社はM-1のサイズ決定にあたり,貴社のバルナック型を範としました.カメラ
にとってこれ以上最適な大きさは存在せず,貴社の先見の明にはただただ敬服するば
かりです.
ネーミングに際しては,貴社にM3をはじめとするシリーズがあることは存じており
ました.,その“M”の由来がMessucher-Kamera'すなわち距離計連動式カメラの“
M”であることは,いまや誰も知らぬ者無し,と言えるほどの世界最高のレンジファ
インダー機でありますから.
当社M-1の“M”の由来はこれこれしかじかでありますが,一眼レフ界において,
貴社Mシリーズのごとく最高たらん,それが無理なら一歩でも近づきたい,との思い
も込めて命名したものです.」
ここまで素直に持ち上げたら,あのライツだって悪い気はしないはずだから,「いい
ですよ.“M”の名称お使いなさい.そのかわり,“Mシリーズ”の名を汚さぬ様精
進なさい」とか言って許してくれたかも分からない.
しかしそれはできなかった。オリンパスにしたら,メーカーとしてのフライドチキン
にビールはアサヒだと思うし,当時の日本のカメラ業界には,もうレンジファインダ
ー機の時代は終わった,これからは一眼レフの時代だ,ライカなどなにするものぞ,
といった確信に満ちた意気込みがあり,おごりの様なものもあったかも知れませんか
らね。
それに,同じ名前のカメラって結構あったんですよね,昔は.
“SP”というのがニコンとペンタックスに.
“FT”がキャノンとペトリにありました.
“F”に至ってはニコン,コニカ,ミランダなどにあったように,当時はあまり気に
していなかったようです.特に日本では........
いったい真相はどんなだったんでしょうかねえ?菅原さん.
どちらにしても,もう遠い日の過ぎ去った思い出になってしまってるんでしょうね.
ところで,“もういいでしょう.助さん,格さん,オリンパスさん!”
そろそろ出して欲しいですよね,ア,レ,を
“OM-5”
出るぞ,出るぞと噂に上って早幾年.
期待しておりました.ヤキモキしてました.
予想とも希望ともつかぬ勝手なこと書いちゃうと
まず,MFで出して欲しいですね.AFにすると大きくなっちゃうでしょうし“OM
-”を名乗るからには,大きさを変えちまったら男がすたる,ってもんです.-1であ
れほどこだわったんだから.
AFにしても大きさは元のまま,って言うのなら話は別ですがね,でもこれはできち
ゃうかも知れない,オリンパスならやっちゃうかも.
あと,ボディは金属製でお願いします.
もし,最高級機として出すならペンタプリズム着脱は必須です.これには異論がある
でしょう,特に真面目に写真撮ってる方々には.そんなの不要だ,って.ごもっとも
,私もいらないと思ってます,最初からちゃんと見易いのが着いていれば。
ですが,これは機能の問題ではなく,精神の問題とでも言ったら良いのでしょう.フ
ラッグシップ機にプリズム着脱機能があるのは。
和室に床の間がある様に,日本国には天皇が........
「水戸黄門」であの“印篭”が出て来なかったら寂しいですよね.
ずーっとチャンバラ続けてなくちゃいけないの?,ってそういうことじゃなくて,た
だのおせっかいな旅のじじいで終わっちゃうとしたら,これでは誰も納得しないわけ
です.
昔はそれなりの理由がありましたが,ボディ内測光となった今は機能としての必要性
は薄いです.ニコンF4に標準以外のファインダー付けてる人って見た事ありますか
?(先の中古市で、高倍率ファインダー探してた人がひとりだけいたらしいですが)
他のファインダー使えないと困る人が非常に少ないことはメーカーでも分かってるは
ずです.交換式にすると構造上のデメリットがいくつも発生します.そんなこと百も
承知で敢えて採用するところこそ,真のフラッグシップ機たる所以なのです.
スペックについては贅沢言いません.(プリズム着脱を除けば,わたしゃ現行のOM
-4Tiでも十分過ぎると思ってるくらいですもの.)
これらを総合すると,“キヤノンNewF-1の機能と重厚さを備え,且つオリンパス
OM-1のスリムでしなやかな機動性を併せ持ったカメラ”
と書いて思い当たるのは,“思カメ”No.3で‘幻の登場’に終わった
あの“キヤノンパスOF-1”です.
まあ,このご時世ですから4000分の1秒とマルチパターン測光ぐらいが付け足し
てあれば,あとはこれといって望むものはありません.
OM-5は,いったいどんなカメラとなって登場するのでしょうか?
楽しみに待つことにいたしましょう。
またしても超長文になってしまいましたが,OM-1とオリンパスへの熱い思いはまだ書
き足りないくらいです.機会があればいずれまた.
宮崎君はじめユーザーの方,カメラ好きの方からのご意見ご感想ををお待ちしてます
.(宮崎君,OM-1のエピソード聞かせてヨ!あと、「させよまいの会」の件もよろし
くお願いします。)
あっ今,気が付いてしまったのですが,ニコンF-801Sにはハイフンがあるじゃ
ないか,っていう突っ込みは無しっすよ,小田さん.
それから,
「佐藤さん.今度会ったら,野沢さんてオリンパスも好きっすね,と言ってください
ね」凛子
おまけにもうひとつ、
「伸一さん。司会、がんばってくださいね、応援してますから。」凛子
では、今夜はこの辺で。
© Copyright 1997,
Shoichi Nozawa