Posted: Sun, 15 Mar 1998 19:25:53 +0900
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野沢@お丸山店です。

だいぶ暖かくなってまいりました。
お丸山店の庭先にも水仙の芽が伸び出して春の訪れを.....こう書くつもりでい
たら、今朝は雪混じりで寒い日曜日となってしまいました。
でも、もうすぐお彼岸ですからね、暑さ寒さも・・・・・・

予定より少し遅くなりましたが“思カメ”No.9をお届けします。
過去8回の“思カメ”ではニコン、ペンタ、オリンパスが2回づつ、キヤノン
とミノルタが1回登場しました。所謂五大メーカーと呼ばれてるところばかり
でしたけど、カメラメーカーは他にもいっぱいありますから、
「よそのばかりやっとらんで、たまにはウチのも取り上げんかー!」
とお怒りのメールはまだ来てませんけど、ここいらで他社のカメラを持ち上げ
て、じゃなかった、取り上げてみることにいたしましょう。
で、前回に続きましてコンパクトカメラです。
(「またか」って言っちゃいやよ。コンパクトカメラって結構奥が深いんです
   から。べつに一眼レフがネタ切れしたためではありませんので御心配なく。)
「おお、いよいよウチの製品が登場するんだな。」
って勝手に思い込んじまった小西屋の奉公人さん達、御免ね。
まっ、そのうちコニカブランドのカメラも取り上げる予定ですので、きれいに
首を洗って、じゃないや、首を長―くしてお待ち下さい。

注)「特定のメーカーばかり取り上げてる“思カメ”はけしからん!」
    と圧力がかかったわけではありませんので御心配なく。


      野沢@古カメ党の
          “思い入れのカメラ”コーナーNo.9

製品名:フジ・カルディアミニ・ティアラ
別  名:プアマンズTC-1(まっ、私が勝手に名付けただけですけども....)

本家リッチマンズとの主な共通点としましては、
1. 28ミリ単焦点レンズ(F3.5)搭載
     注)単焦点とは、ズームじゃないってことです。
       (ビギナーにも優しく親切な“思カメ”を目指してたりして....)
2. コンパクトサイズでフルオート
3. 金属外装(本家はチタン、こちらはアルミニウム。)

といったところです。
これらは同時に、私のコンパクトカメラ選択理由の優先順位でもありました。
一番目に挙げた焦点距離28ミリというのは、スナップ&旅行用としては必須
だと思ってます。特に日本のような狭い空間では、引きが効かなかったりして
35ミリでも辛い場合が多いですから28ミリは重宝するのです。
ボディサイズが真にコンパクトであることは今更言うまでもありませんね。
外装に金属が使われている点に関しては、まあ、金属カメラ症候群重症患者の
愚かな思い込みとお笑い下さって結構です。
でもね、カメラはやっぱりカネですよ、カネ!
「カネにまかせて」のカネじゃありませんよ。
ほんにカメラはカネで出来てないかん!と思うとるんよ、わては。
古より“立って半畳、寝て一帖”と言うように“持ってずっしり、触わってひ
んやり”ってのが基本です。(因果関係不明)
スコーンと拍子抜けするほど軽くて、妙に生暖かい気がするプラスチック製と
いうのは、カメラとしてはなんとも信用できない感じがしちゃうんです、私。
(鉄器時代のDNAを引きずってでもいるんでしょうかね?)
ティアラ購入時点では、上記3項目をすべて満足するカメラは他にありません
でした(TC-1は発売されてなかったはずですし、現在でもこの2機種以外で
はリコーGR-1くらいじゃないのかな?)ので、あれやこれや悩むこともなく
即決定しちゃいました。と言うのも、じつはずっと待ち続けていたのです、そ
んな私にとっての“理想のコンパクトカメラ”を。
前回の“思カメ”で少しだけ紹介した「オリンパスXA4(28ミリ搭載)」
の後継機となるカメラを探してたんですヨ。XA4をフルオートにした魅力的
なコンパクトカメラがあったら欲しいなあ、って。
もしもTC-1が先に発売されていたら?
うーむ、どうだったでしょう.......
その問題はかなり難しいのでちょっと脇へ置いとくとして、これからフジ・テ
ィアラの全貌をお伝えしたいと思います。
ま、先程あげた3項目ですべて言い切ってると言えなくもないのですが、もう
少し詳しくお話しますね。
......と言いつつも、やっぱり特にこれといって書くべきことはありません。
あの3項目を除けば、もう普通のコンパクトカメラと何も変わらんのです。
お決まりの“偽パノラマモード”だってちゃんと装備されてます。これについ
ては前からひとくされ言いたかったのですが、これってユーザーをバカにして
ると思いません?(あやっ、いかんいかん!この調子で書き続けると、また“蟄
居謹慎の上閉門”くらいじゃ済まなくなっちゃうかもしんない)
“所払い”や“遠島”なんてことになると非常にまずいので、ここは気を静め
て論理的に書くことにしませう。
私はなにもこの機能自体が悪いと言ってるのではありません。
“パノラマモード”っていう表記が人をおちょくってると言いたいのです。
(おいおい、そんなこと言っちゃって大丈夫かい?)
ほんとのことだからこの際はっきり言わせてもらいます。
画面の上下をカットして横に長い写真にしただけで“パノラマ”って呼べるん
なら、真ん中だけトリミングしたのを“望遠モード”と呼んでいいことになり
はしまいか?
じゃあ“パノラマ風モード”なら良いのかって?
それもいけません!ちっともパノラマじゃないんだから、ここは正直に且つ正
確に“上下カットモード”とでも呼ぶべきです。
(今からだと何年も前の話ですけど、レンズ付きフィルムで“パノラマ専用”
ってのが出た時、私は「36枚撮りフィルムで何コマ写せるの?」ってマジ
でカメラ屋さんに質問してしまった悲しい経験があったのです。)
世の多くの方々と同じように、私にとってこれは必要のないどうでもよい機能
なのですけど、中にはこれで楽しんでおられるひとがいるかも知れませんし、
少しはラボの売り上げにも貢献してるかもわからないので、まあ個人的には、
できることならこの機能は無くして、その分コストを他にまわしてもっと良い
カメラにして欲しいと思ってます。
その外にも
  ・絞り値を選べないプログラムのみのAE
  ・押してからすぐ切れないタイムラグのあるシャッター
・ コストを省いたファインダー
などなど、気になる点はいくつかありますが、これはなにもティアラだけに限
ったことではなく、普通のコンパクトカメラではごくごく当たり前のことに過
ぎません。
だからもし、これらの点に軽く目を瞑ることさえできるならば、ティアラはT
C-1にもそれほど引けを取らない魅力あふれるカメラと言えるのです。
外装だって高価なチタンでこそありませんが、それ風に仕上げられています。
それでもたかがアルミだろ?って侮ってはいけません。アルミと聞くとすぐに
質素な一円玉を思い浮かべてしまうけど、ティアラのボディはずっとずっと品
のある高級そうな仕上げです。窓サッシのアルミに比べたって数段高級っぽい
んだから。これが結構“持つ喜び”っつうやつを満たしてくれるのよ。
スイッチ連動のスライド式バリアだって、TC-1や他のカメラの沈胴部シャッ
ターみたいに薄っぺらで頼りないやつとは違って、丈夫な造りで中の光学系を
しっかりガードしてくれてます(ファインダーの対物レンズまでカバーする)。
肝腎のレンズにしても、本家のロッコール28ミリF3.5に対してEBCフジノ
ン28ミリF3.5と名前だけなら決して負けてはいません。改めて説明するまで
もなく、この“EBCフジノン”なる名称はプロ用大判中判レンズとして定評
のあるブランドですから、ティアラみたいな安いコンパクトカメラのレンズに
この由緒ある名称を付けてしまってほんとにいいんだろうか?って心配してし
まったほどです。
もちろんレンズの名前で写真が写るわけではないので、実際の写り具合はどう
なの?って興味津々の方々もおいででしょう。
はっきり言ってこのレンズは悪くないです。これだけ写れば無理して高額なT
C-1を買う必要はありませんね。
もっとも、これはエルマーだとかズミクロン等の大昔のレンズで満足してる人
間の言ってることですからあまり当てにはなりませんヨ。
それに、私はTC-1で写した写真をまだ一度も見たことがないですし(と言う
より、なるべく見ないようにしている、と言うべきかも知れませんが)、目に
してもなおTC-1は買わん!と言い切れる自信は全く無いわけですから、もし
万一私がTC-1を購入しちゃっても、責めたり罵倒したりしないでくださいね。

さきほど「もしこれらの点に目を瞑ることができるなら」と書きましたが、
ティアラとTC-1の値段差を聞いたら誰だって目瞑っちゃうんじゃないのか
な?
そもそも、ティアラを“プアマンズTC-1”と呼んでる理由は、もちろん本家
ミノルタTC-1に比べて値段がべらぼうに安いからですが、その安さというの
が半端じゃないのです。定価では、本家1台でプアマンズなら4台は楽に買え
ます。実売価格でなら、なんと5台買えちゃいます。(自分でこれ書いてても
信じられないくらいです。でも、ほんとうなんだから。)
このカメラの名誉のために言っておきますけど、5分の1の値段だから満足度
もそれなりなのか?っていうと、断じてそういうことはないと申せます。
自動車に喩えれば、TC-1をベンツCクラスとするならティアラは一応外装が
金属で高級ぽいので本皮シート仕様のトヨタカローラみたいなものですかね?
(EBCフジノンレンズも付いてるくらいだから“カローラ・ロイヤルサルー
  ン”てな感じかな?)
高級感や乗り心地、操縦性に安全性など比較すればベンツに敵う筈はありませ
んが、ファミリーカーとして実用する上ではカローラは立派に役目を果たせる
クルマです。
叶うことなら一度はベンツを愛車にしてみたいと思ってる私ですから、決して
ベンツを否定するつもりはありません。以前、試乗した経験があるのですが、
やはり、国産の普通のファミリカーとはフィーリングが一味も二味も違いまし
たから、「さすがに高いだけのことはあるな。これがリッチマンのテイストな
のか。」と納得しちゃいました。同時に「でも、おいらにゃカローラで充分さ。」
って思ったのも確かでしたが.....
きっと、それと同じことがTC-1とティアラにも言えるのではないでしょうか。
だとすると、TC-1は非常に危険です。
何百万もするベンツなら私は間違っても買うことなどできませんが、ティアラ
の5倍とは言っても実売価格約2万円の5倍なら無理すれば買えないことはな
い金額ですからね。だから、
いかん!これ以上カメラ増殖させてどうするんだ!(ティアラだって2台ある
のに)って必死で言い聞かせてます。
まっ、ここはぐっと目を瞑ってティアラで満足すべきなのかも知れません。と
いうか、今のところ充分に満足してるんですが、うっかり目を開けてTC-1の
写真なんか見てしまった日にゃ、写り具合の微妙な違いなどが気になって気に
なって、あの双眼鏡グルメな人達のように、恐ろしい“オプティカル底無し沼”
に嵌ってしまう危険があぶないんですよね。
更に、「誰々に何々を買わせる会」っていう怪しげな団体が結成されたりする
と事態はもっと深刻になったりします。彼らは口が上手いうえに妙に説得力が
ありますし、これでもかこれでもかって具合に誘惑の魔の手を伸ばして来ます。
例えば、
「いやー、TC-1ってやっぱ写り凄いわー」とか
「野沢さん、新宿の○○○でTC-1半額で売ってましたよー」とか、
こうなると信念の人悟くんかヤクザ石せんせくらいに石が固くないと防ぎきれ
ないかもしんない。
節操のかけらも無く意志の脆弱な私は、「ティアラで満足、ティアラで満足」
と念仏唱えながら仏におすがりするより術が無いのです。
どうか私を誘惑しないでください。>その筋の人達

というわけで、今回は無謀にも、あのTC-1に5分の1で買えるティアラで対
抗するという暴挙に出てしまったわけですけど、見事に返り討ちに遭ってしま
いました。
「安くても良いカメラはある。」っていうことを書きたかっただけで他意はない
ですから誤解しないでくださいネ。


これで“思カメ”No.9も無事終了。
次回はいよいよ「10回記念特大号」です。
はじめは2、3回で終わっちゃうのかな?って思ってましたけど、
「おもしれえー。」とか「もっとやってくれ!」など
極一部の方々(決してサクラではありません!コニカかもしんないけど。)か
らの暖かい声援に支えられてここまで続けて来れました。
(ほんとは他にも理由があるんですが、今日のところはそういうことにしてお
  きませう。)

では、次回をお楽しみに。


  野 沢 昌 一
 野沢麹店お丸山店(のざわこうじてん おまるやまてん)
 TEL.FAX  028-686-5758   自宅TEL  028-686-2150
 E-mail  nozawa@mxb.meshnet.or.jp


© Copyright 1998, Shoichi Nozawa