Posted: Thu, 20 Nov 1997 00:28:06 +0900
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野沢@「間違い選びのカメラだらけ」です。

わたくし、“思カメ”No.6を発信準備中でしたが、只ならぬ事態が発生し
たため  急遽予定を変更して臨時増刊を出すことに致しました。
と言いますのは、どなたかのメールにも書いてありましたように、17日発
売の「CAPA」臨時増刊に「完全復刻ニコンF取扱説明書」なるものが
付録となってしまったからです。
(発売日に本屋に買いにいって、とんでもない付録にびっくり。翌朝、赤
松くんの“NikonFの話”のメールが届いてたので二度びっくり。もしも
彼がその付録のことを知らずに書いていたのだとしたら、このタイミン
グの良さはどういうことなのだろうか。神のお告げ?嵐の前兆?今後は
彼を“嵐をよぶ男”と呼ばせていただきます。)
中古カメラファンなら先刻御承知の通り、ニコンFは現在値上がりを続け
ています。折からの中古カメラブームの影響で、ここ半年ほどの間にも市
場価格がぐんぐん上がって来てました。
そのような状況にあるにもかかわらず、ここにきて「ニコンF取説」など
というものが、たとえ復刻版とは申せ世に広く出回るということは火に油
を注ぐも同然、ニコンF急騰に拍車を掛けることは間違い有りません。
(それにしても、あの付録、ほんとによくできてます。27年前、Fを新
品で買った時付いてきた本物とそっくりの色具合なのです。裏表紙に、
“付録”と書いてなかったら、まったく区別つきませんって。)

“わたしの愛機”でもあるニコンFが世間で高い評価を与えられることは
ユーザーとしてとても喜ばしいことですが、今からFを使ってみたいと考
えておられる真のカメラファンの手が届かないほど高額になってしまうと
したら、それは哀しいことです。
しかし、前述したように“F”が高嶺の花になってしまう日は確実に近づ
きつつあります。この手の出版物の影響は予想以上に凄いものがあります
から、来春の中古カメラ市の頃には、ライカM3並みの相場になることだ
って有り得ないこととは言えません。最近のαやイオスの人気しか御存知
でない方は理解できないのも当然ですが、中古市場においてニコンは特別
なのです。特にアメリカにおいては、かのライカと同格かそれ以上の熱心
なファンが存在するようです。おそらく彼らは、私達日本人が“ライカと
聞くだけでゾクッとしてしまうのと同じように“Nikon”(今はナイ
コンと呼ぶ人はいないらしい)の5文字に“神”さえ感じるのでしょう。
まっ、よその国のことはともかくとして、この日本でニコンFが“神”と
して崇められるようになる前に、ひとりでも多くのカメラファンに生身の
“F”を手にしていただくために、この臨時増刊をお届けします。


      “思い入れのカメラ”コーナー 臨時増刊 Vol.1

           F型ウィルス感染者のための
                     「ニコンF購入ガイド」その1

前振りにも書いた通り、もう時間的猶予はありません。
高くなる前に、といっても、今でもかなり高いのですが(同時期の他のカ
メラに比較して)、ニコン病、特に“F型ウィルス”は悪性ですから今欲
しいと思ってる人はどうせいつかは買うことになるので、これ以上高くな
る前に買っておくことが得策と申せましょう。

<ニコンFのバリエーション>

ニコンFと一口に言っても、15年間も生産販売され続けた超ロングセラ
ーモデルですからその種類は多岐にわたります。
まあ、Fを買おうと思う人ならその辺はよく御存知のことと思いますが、
ざーっと、おさらいしておきましょう。

ニコンFはファインダー交換式だったこともあり、装着されているファイ
ンダーによって呼び名が違います。

[ニコンF]:アイレベルファインダー(とんがった三角頭の)を装着
              したタイプ。時期によってこのファインダーにも2種類
              あり、アイピース枠の形状が違う。それに刻印の違うも
              のもあるらしい。

  [ニコンFフォトミック]
            :フォトミック系の初代モデル。TTLではないので、丸
              いCdS受光窓をもつ。

[ニコンフォトミックT]:TTL平均測光を採用。

  [ニコンフォトミックTN]:TTL中央部重点測光を採用。

  [ニコンフォトミックFTN]:TNの改良型。

[ニコンFアクション]:60ミリのハイアイポイントをもつアクション
                        ファインダーを装着したモデル。

以上はファインダーの種類による分類ですが、実はボディー本体にも幾つかのバリエーシ
ョンが見られます。大きく分けて次の2タイプ。

[ニコンF前期型]:かなり多いタイプ。

[ニコンF後期型]:巻き上げレヴァー、セルフタイマーレヴァー、シ
                    ンクロ接点等にF2タイプの部品を使ったモデル。
                    数はそう多くない。No.740万番台前後のはず。

この前期型ボディーには、恐ろしいくらいのバリエーションというか細か
な違いが見られるのですが、いま手元に資料がないので記憶している範囲
で簡単に説明します。

[軍艦部に、あのツアイス・イコンのマークに似たNippon Kogaku Tokyo
  のマーク入り。]

[アメリカでは“レッドドット”と呼ばれる、機体番号の前に赤点が刻
  まれている。]

[Nikonの名板の形状の違い]:No.690万番台後半あたりから別れる。

[モードラ対応調整済み]:モードラ使うには調整が必要だったため。

[布幕シャッター装備]:初めからチタン幕が普通だが、このタイプ
                        も確かに存在するのをこの目で見ています。
                        おそらく、静音化か極寒冷地用の改造ではな
                        いかと思われる。

  [プレス加工?の巻き上げレヴァー]
                        :金属のむくで出来ているのが一般的だが、プ
                          レス加工で作られたように裏側が凹んでいる。

もっとあったようにも思いますが、このくらいしか記憶してないので、こ
こらでお許しを。
それから、言うまでもなくクロームメッキとブラック塗装の2色がありま
すね。(私が購入当時はブラックボディーは1,500円高でした。)

<現在の国内市場価格>

本日11月19日現在の相場がどうなっているかまでは把握できてませんが、
2、3ヶ月前あたりは、3万円台から30万円まで、種類やレンズの有無、
程度の差によってそれこそ玉石混合といった状況でした。
中心価格帯は10万円弱前後(6万から12,3万)といったところだった
と思います(クロームボディー)。
特徴としては、高値のアイレベルに比べてフォトミック系がかなり安いと
いうことです。発売時定価はフォトミック系の方が高かったのにと不思議
に思われる方もいるでしょう。中古価格というのは需要と供給で決まるわ
けですから、フォトミック系は人気がいまひとつということです。やはり、
あの建て増ししたようなスタイルと重さ、メーターの修理が難しいという
状況から来てるものと思われます。
それから、これはニコンFに限らず他のカメラにも言えることですが、シ
ルバーのクロームメッキよりブラック塗装のボディーの方がかなり高い値
段が付いていることです。極端な場合、2倍近いですね。
それと、F用のアクセサリーもぐんぐん高くなって来てます。フォトミッ
ク系ファインダーはそれほどでもないですが、アイレベルファインダーは
目の玉がぶっ飛びます。9月の伊勢丹中古カメラ市の報告でも書きました
が黒のアイレベルが程度極上で6万円してました。白でもかなり高いはず
です。まあ、へこみ無しなら2万円以下では無理だと思います。あと、ア
クションファインダーも高値です。ウェストレベルファインダーは1万か
ら2万の間には納まるようですが....
(上記の傾向はF2にもそのまま当てはまりますよ。>小笠原くん)
交換レンズはそれほど慌てなくとも平気かも知れません。新品も出てます
し、中古品も市場に溢れています。なにしろニコンはマウント変えてない
から、Fならどんな昔のレンズでも使えますしね。
明日、20日は各カメラ雑誌の発売日です。巻末のカメラ店の広告が気に
なりますが、あれは一月前のものですが参考にはなります。ただ、例の取
説の付録を見て急にムラムラっと来た人達がもう店頭で買いに走ってる可
能性が充分考えられるので、今月中に品不足に陥り急激に値上がりするか
も知れません。と言うことは、この週末が第一回目の決戦になるのでしょ
うか。(「決戦は金曜日」というのはドリカムの歌のタイトル?)

<どのモデルを買うべきか>

「アイレベルとフォトミック系とでは価格差が大き過ぎますから、アイレ
ベルでなければいやだ、という人以外は無理をせずフォトミック系を選ん
でもいいかも知れません。」
一般のガイドブックならまずこう書くところでしょうけど、Fと共に27年
の私としてはそんなお体裁を言うつもりはさらさらありません。
ここはひとつ騙されたと思ってアイレベルをお買いなさい。
でもそれは個人の好みの問題でしょ、と言われて、ハイその通りですね、
と引き下がるわけには参りません。
おせっかいに聞こえるかもしれませんが、ニコンFの本当の良さはアイレ
ベルモデルを使ってこそ分かるのです。どうせ買うなら借金してでもアイ
レベルになさい。絶対に後悔させないから。
メーターが付いてないと露出が心配だと思ってるのなら、それは単体露出
計を使えば済むことです。それに、フォトミックのメーターだって今は動
いていても何時死んじゃうか分かりません。ニコンでは修理できないって
言ってるから、Fを使うにあたってはメーターに頼ってはいけないのです。
実は、小田さんも私もフォトミックFTNファインダーも持ってます。で
も、ほとんど、というより全く使わないんです。使う気になれないんです
よね、アイレベルの軽快な使い心地に慣れちゃうと。
でもどうしてもフォトミック系が好きで堪らないという人、また、スーパ
ーでお肉を買う時、グラム当たりの単価を気にする人にはフォトミック系
はお勧めです。この点ではFシリーズ中最高のコストパフォーマンスです
から。それから、体力を付けたい人にも最適ですね。
まあ、ここまで言っても分からないんなら、もういい、私は寝ます。
一気に書いて来たから、目がだいぶ疲れました。
この続きはまたあとでね。おやすみなさい マル


© Copyright 1997, Shoichi Nozawa