Posted: Tue, 13 Jan 1998 15:58:52 +0900
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       “思い入れのカメラ”コーナー 臨時増刊 Vol.2

           F型ウィルス感染者のための
                     「ニコンF購入ガイド」その2


<ニコンFの変遷>

前回、<ニコンFのバリエーション>ということでざっとご紹介しましたが、
その補足も兼ねて、ニコンF関連の主な出来事を大まかに年表にしてみまし
た。

1959年6月:「ニコンF」発売   (1号機は #6400001といわれている)
1962年4月:「フォトミック」発売       
1965年8月:「フォトミックT」発売 ( #6700001以降およびそれ以前でも
                                     No.の頭に赤丸印が有る、という)
 #6602847以降:フォトミックT取付けのためのミラーボックス後部切欠き。
1967年4月:「フォトミックTN」発売   
1967年頃 : 軍艦部ロゴ変更(NIPPON KOGAKU TOKYOからNikonへ)
1968年9月:「フォトミックFTN」発売
 #6900001以降:FTN取付けのための銘板形状変更
1968年   : アイレベル接眼部変更(接眼枠の形状が長方形から正方形&丸型へ)
                  これにより、視度補正レンズやマグニファイヤー等が
                  ねじ込み式で取付け容易になった。
1971年9月:後継機ニコンF2発売
1974年5月:ニコンF販売終了  (ラストナンバーは #750万番台か?)


年表に記した以外にも、多数の細かな変更がありました。例えば、Fの初期に
見られる下記の特徴はその後変更されています。

    ・巻戻しクランク:指で摘まむ部分が回転しない。

  ・巻き上げレバー:裏側がえぐれている。

  ・巻き取りスプール:フィルム差込の切り欠きが1個所しかない。

    ・セルフタイマーレバー:ギザが斜め方向に入っている。


ファインダースクリーンのフレネルピッチにも変遷があったようです。
  
  当    初  :8本/ミリ

  1964年頃 :12本/ミリ

  1970年頃 :25本/ミリ

1970年製以前のFをお持ちの方はファインダースクリーンを新型に交換して
みることをお勧めします。フレネルの同心円が気にならなくなって、きっと
驚かれることと思います。スクリーンはF2と共用になっていますから、F
2用をお求めになれば間違い有りません。

以上は、外側から見て違いが分かる変更ですが、内部機構の変更改良となると
杉田玄白しないと判別できません。15年間という長い製造期間のため途中数
え切れないほどの機構変更が行われたはずなのです。
代表的な変更と言えば“ミラー作動用のバネの変更”が上げられると思います。
当初、ミラーの跳ね上げ用と復帰用とでは別々のバネを使用してましたが、旭
光学の考案に抵触しないようにするため単一のバネで兼用することにしたらし
いのです。販売開始からいくらも経ってない1959年末ごろのことであった
といわれています。


ここまではカメラ本体に関してだけ述べてきましたが、「取扱説明書」にもいく
つかのバージョンが存在します。国内向け以外に輸出用として外国語で書かれた
ものがあるのは当然としても、制作年度によっても違いがあるようです。
70年版と72年版(後期型)とでは、とくに参照写真等に違いが見られます。
70年版に出て来るニコンFの写真には一部初期型のモデルが使われていますが、
72年版では後期型に代わっています。
例のCAPA臨時増刊付録の復刻版はこの72年版が元になっているようです。

また、元箱のデザインやフード等の刻印などいったものまで含めると、きりがな
いほどの変更があったといえます。


最後に“Fの珍品”に属するものを以下にまとめておきました。

   ・布幕フォーカルプレーン:F発売当時の初期に見られる。
    
   ・#640万番台(6400001~6409999):“初期型のF”としてコレクターには
                                       珍重されている。

   ・#660万番台のF:S3Mに割り当てられたナンバーだからFには存在しない
                     はずで、あっても1ロットくらい、とか言われている。

   ・レッドドット:「一時期のボディーには、はじめから“切り欠き加工”を
                    施し出荷したボディーの製造番号の頭に赤い丸を刻印し
                    て、未加工のボディーと区別してあるものが存在する」
                    とあるので、1965年頃製造されたものと思われる。
 
   ・後期型ボディー:巻き上げレバーに指当てプラスチック付き(F2タイプ)。
                     セルフタイマーレバー及びシンクロ接点が、やはりF2の
                     タイプ。最後期の730万番台から見られる。
                    「ニューF」と呼ばれることがある。
                      前期型にこれら後期型のパーツを交換するサービスをメ
                      ーカーで行なっていたので、所謂「偽ニューF」も存在
                      するので注意が必要。

   これらは中古市場にはあまり出回らず、出ている場合は高値がついているよう
   です。この意味では、ブラック塗装ボディも珍品の部類に入れるべきかも知れ
   ません。


<どのようにして購入するか>

今から2年前なら、迷わず「アメリカの中古カメラ店からの個人輸入」をお勧め
してました。あの頃国内では現在ほどではないにしてもFは結構いい値段してま
したが、かのアメリカに於いては夢のような金額でFが買えたのです。
全盛期の国産メカニカル一眼レフカメラは、古いライカ等と違って故障が少なく
頑丈にできてるのでハズレを引くことはまずありませんから、信用できる店なら
ば、現物を見ずとも店で付けている程度表示を信じて安心して注文できました。
けれども、現在、ライカをはじめとする中古カメラの値段は日本が決める、と言
って差し支えない状況になって来てるので(世界中のライカの美品のほとんどが
日本に集まっている、等と言われてるそうです。)、ニコンFの値段はアメリカ
に於いても徐々に上がって来ました。それに、円が安いですから、今わざわざア
メリカから輸入するメリットは以前ほど大きくはない、と言えます。
現在ではあまり参考にはならないでしょうが、当時いかに安くFが手に入ったか
の実例を紹介します。(注:日本円の金額には送料等も含むが、同時に購入した
他のアイテムと頭割りにしている。また、“ボディのみ”とはスクリーンは付い
ていたがファインダーは付いていなかった。)

・ 95年8月 F初期型(#6416895)中程度     254USドル、 実費 28,468 円
 
 ・95年9月 Fブラック(#6981956)中の上   399USドル、 実費 41,514 円

 ・96年1月 Fボディのみ(#7086384)上の中  80USドル、 実費 13,162 円

どうです、夢のようでしょう?
でも、これを書いている97年12月上旬の時点では、残念ながらこうは行きません。
アメリカでのF急騰と円安のダブルパンチで、かなり高くなってしまいました。
2年前の“実費”の2倍はするでしょうね。
それでも、日本で買うよりはまだまだ安い!と言えますから、とにかく安く買い
たいという方には個人輸入をお勧めします。もしやってみたいと思う人がいれば、
詳しくお教えしますよ。

現物を見ずに買うのはどうしても抵抗あるという方には中古カメラ店に行くしか
ないでしょうね。
この場合、できることならFに詳しい人に一緒に行って貰えれば安心ですよね。
もしも、Fの達人オダトール大司教様に御同行いただけるのなら、どんなに心強
いことか。
それが無理なら、たくさんの中古カメラ店を廻ってできるだけ多くのFを見比べ
ることが肝要です。中古カメラは新品と違って同じものはありませんから、多く
の物件を手にとって見比べる以外ないのです。そのうちにだんだん目が肥えて行
きますから、あとは自分のサイフと相談して気に入いった物件を選べば良いので
す。先日、サトー@柏くんが銀座のカメラ屋を1軒1軒しらみつぶしにあたり
(「銀座巡礼」)、延べ数十台のなかからお目当てのFを選び出した方法がこれ
です。
場所はなにも銀座に限りません。中古カメラ店が何軒も集まっている地域ほど効
率が良いわけですから、この意味では新宿や新橋なども“メッカ”と呼んで差し
支えないでしょう。
また、集中しているわけではないのですが、高輪や中野、それに学芸大辺りにも
大きな中古カメラ屋がありますから寄り道してみたらいかがかと存じます。


巷では、もうすぐクリスマス。
がんばって働いた自分へのクリスマスプレゼントに“F”を一台いかがっすか?

さて、2回に渡りお贈りした「ニコンF購入ガイド」もこれで終了となります。
皆様があの素晴らしい“F”と巡り合えるための一助となれば幸いです。
そして、その“F”と共に素晴らしいカメラライフを送られることを祈って、
結びの言葉とさせせていただきます。                  グッド・ラック!


  野 沢 昌 一
 野沢麹店お丸山店(のざわこうじてん おまるやまてん)
 TEL.FAX  028-686-5758   自宅TEL  028-686-2150
 E-mail  nozawa@mxb.meshnet.or.jp


© Copyright 1997, Shoichi Nozawa