日食以外にもいろいろあったことの報告

2-2 最低と最高の味の巻


2-1 霧のミズリナ湖の巻より続く

8月8日(日) くもりときどき晴れ

 Cortina d'Ampezzoは、周りじゅうにある岩山とスキーコースのへそのような位置にあり、このあたりでは最も大きい町だ。だから、そこに行けばすぐ両替もでき、食事もゴーカに出来ると思っていた。ところが...

 駐車場に車を入れて(リラをかき集めて料金を払う)街に出ると、そこはなんだか静まりかえっている。銀行は閉まっている(日曜日だった!)。郵便局、同じく。ツーリストインフォメーションセンター、4時まで昼休み! 道の両側にならぶブランド店もスポーツ用品店も皆閉まっている。真夏のリゾート地というのに通りには人影もまばら。こ、これがイタリアの日曜日なのか! どうしよう?? 私たちは道端にいたパトカーに救援要請し、通りかかった人に通訳してもらってまであちこち尋ね歩いたのだが、どの両替機も使えなかった。

 現金がなければカードで払えばよさそうなものだが、村松氏から、イタリアでは偽造カード犯罪が横行していると聞き、なるべく使わないことにしたのである。そこで、杉山氏が持っているマエストロカードを使える店を捜すことにした。これだとクレジットカードのように署名で認証するのではなく、暗唱番号をそのつど打ち込むから少しは安全と思われた。

 やっとカフェテラス+バーのような場所で注文を済ませた。ムシはもう夕食まで時間がないと判断、ホットサンドのような「フォッカチオ」にして、これはどうってことない味だったのだが、山浦さんの「ペンネ」は固く、さらに悲劇だったのは、他の2人の「ピザ」だった...

 妙に横長のすごく大きいピザで、ゆうべ食べたのとは明らかにちがう感じ。まず、ナイフで切るのが困難...しかも中心部が...冷たい...冷たいピザ! 冷めたピザっていうのがあったが、表面のチーズだけ溶けて、内部は焼けていないのだ。ここはどこ? 練馬だってこんなピザはないのに本場イタリアでこんなものを食べさせるとは。

 とほほと思い、早々に立ち去ろうとすると、支払いでまたもめた。なんと、最初は使えると言ったマエストロのシステムがうまく動かない。どうも使い方をよく知らないようである。店長らしき人がどこかに電話して指示を受けるのだが、何度やってもだめ。それはとうとう山浦さんが近所のホテルのフロントと交渉して両替してもらい、現金で支払うまで続いたのだった。

 二度と来るか、と思って外へ出ると、目の前にたい子さんと慶太郎君がいた。なんと、正面の店でお昼していたのだった。いきさつを話す。イタリアでは「まずい店」にはまずお目にかかれないそうだ。たぶん、すぐつぶれるのだろう。これは珍しい経験をした!のかもしれない(-_-;;

 さて、村松一家はCristalloのロープウェイに行ってきたところで、これからFaloria方面に登るという。そこで我々もくっついて行くことにした。天気がよければ、Faloriaからはコルチナの町を囲むCristalloとTofanaが眺められるはずだが、どうも雲が多い。

 Faloriaは2本のロープウェイを乗り継いで登り、最後はすさまじい岸壁のそばをこするようにして到着する。こちらへ来て驚いたのは、ほんとうにどこにでもロープウェイがあることだ。日本ではとても考えられないような場所に楽々と行ける。ここも、コルチナの町(約1200m)からほんの30分ほどで2327mまで登ってしまう。

 終点の小屋には必ずレストランやカフェがあるのもお約束のようで、イタリアではエスプレッソを味わえないような登山はないかのようだ。エスプレッソコーヒーは圧力をかけて抽出するので、高地向きであるとも言える。

 上からの眺めは、雨はひどくないものの雲が視界をさえぎり、あまり芳ばしくなかった。元気な人々は眺望を求めてさらにスキー場の斜面を登って行ったのだが、私は久々のトレッキング(2000m以上に行ったのはたぶん20年ぶり)でかなり疲れてしまい、頂上駅で待機した。カフェで一服したかったがお金がないのだ。

 斜面を駆け降りてきた慶太郎君は、お母さんとシロツメクサの花輪(花咲く〜乙女〜たちは〜 古いぜ)を編んできてくれた。これはずっと私のベッドの柱にかけておいたのだが、日本へ出国するとき持ち出せないだろうということで残念ながらアムステルダムに置いてきてしまった(;_;)。

 下界へおりて、しばらく各自町中を歩くことにした。ここで、大変喜ばしいことに、「キャッシュディスペンサー」が発見されたのである。これで現ナマ問題は解決、しかも、ふと見ると、街には人があふれているではないか!

これでも午後5時

 教会の鐘がなりひびき、5時を過ぎると、一斉に通りの店が開きはじめたのである。え〜っ日曜日は昼休みが長いだけだったの?

 私は下ろしたばかりの現金を持ちスポーツ用品店へ。身軽なスポーツサンダルを買いたかったのだ。オリンピアという店で、日本にも行ったことあるヨというおじさんが相談にのってくれる。もうかなり年配だが「日本のスキーコースはやさしかったヨ」と言った。そりゃあおじさん、コルチナのコースで鍛えてりゃ、どおってことないでしょお。イタリアおじさんの例に漏れず女性にはものすごく親切で、展示していない商品も倉庫から出してきて次々に試してみろと言う。結局いちばん安いの(3000円くらい)を買った。

 さて、夕食は帰り道のドビアッコDobbiacoに行くことになった。途中、ドビアッコの近くの登山用品店に寄る。村松氏は日食後、Tre Cimeに登るということで、そのための備品を仕入れたらしい。この店には、私が神田で現品処分で買ってこの日も履いていたアプローチシューズと同じ型のを売っていたが、その金額より少し高かったので、やったねと思う。

 そうだ、最低のあとには最高があったという話。この夜行ったドビアッコの店は、今回の旅行を通じ、いちばん美味しかった。それも、この付近は行きがかり上イタリアになっているがもとはチロルの一部だったわけで、ピザもあるし、アップルシュトルーデル(オーストリアの代表的なお菓子)もあるという具合、イタリアとオーストリアのいいとこどりの味だったのである。

 私の注文したミネストローネスープは、うまく表現できないが絶品で、ピザもあっという間に食べられてしまう軽さ、ワインがもちろんイタリア、トスカーナのキャンティクラシコリゼルヴァで、アップルシュトルーデルも日本で食べるのとは違っていた。ここはそれほど安くはなく、一人4000円くらいしたと思うが、ほんとうに満足した。

 

 続きは3 ドロミテ街道の巻


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