日食以外にもいろいろあったことの報告

1 オーストリアでぞろぞろの巻


8月7日(土) くもりときどき大雨のち晴れ

 私たち(北沢幸一とムシ)はインスブルックのホテルCentralで目覚めた。ベッドは幅が狭く配置がロッジみたいなL字型で、いやー、山だなという雰囲気だが、居心地はよい。しかし昨夜は大変に暑く、日本の熱帯夜を思わせた。建物の構造が熱気を逃がさないようになっているらしい。

 窓から手を出してみると朝の空気はさわやかだ。よかった、まだ暑くないよ。

 朝食に食堂へゆくと、そこはギリシャ人の団体とイタリア人の団体が占拠していた。どちらも年寄りが多いが、イタリア人の方が圧倒的にうるさい。おじさんもうるさいのが特徴だ。しかし昨夜隣室で大声で演説?していたのはどうやらギリシャ語だったらしいとわかる。内弁慶のギリシャ人?どうもよくわからない。

 団体客のせいで私たちはホテルの食堂区分からはみだしてしまい、インスブルックでは有名らしいカフェツェントラルの側で朝食となる。(ちょっと仕切があるだけで同じ空間)

 なにしろオーストリアなので、コーヒーもイギリス(日本と同じにずさんに保温してあるまずいやつ)とは異なり金属のポットで持って来てくれる。ミルクもイギリスとちがって熱いのが金属の大きいミルクつぎで来る(カフェオレ用か)。

 コーヒーを一口飲み感激。おいしいっっ。あの、イギリスの、ああまだお湯のほうがましだったこの地でコーヒーを飲もうと思ったのが間違いでございました、っていうのとは全然ちがう。濃くてとろっとした口あたり。がぶがぶと飲む。そのあいだに団体客はいなくなってしまう。コーヒーおかわりを所望すると、「カフェの開店時間だから席をどいてね」って言われて、ホテルの側へ移動する。団体用には魔法瓶にコーヒーが入ったものがテーブルごとに置かれている。それをまたたっぷり飲む。

 たかが朝食でこんなに長く書いてていいのか?

 まだ8時だというのに団体客はバスで次々に出発。イタリア人もツアーでは団体行動できるのか、と感心。

 荷造りをして、待ち合わせまで朝の町をぶらつく。杉山隊のホテルは町の目抜き通りの真ん中へんにあり、たいへんに便利な場所。朝食を食べる人々が通りから丸見えなのも愛敬だ。

 インスブルックもほとんどの土産物屋は雑多な同じ様なものしかないのでうんざりしていたが、一軒よさそうなレースの店に入る。山だから皆早起きなのか、店もほとんどが8時から開いている。

 店の主人(まだ若いみたい)が「マダーム、(せっかくきれいに並べた品物をかき回さないでほしいなあという目)、どういう柄でどの大きさって言ってくれれば出しますから」と宣言、私は「へへえ、んじゃ、これの丸いのと、これの長四角をおねげえしますだ」とおとなしく買い物したのだった。

 ホテルに戻り、エレベータの方へ行きかけると背後で「五賀さん、じゃなかった、」という声がして、杉山氏とその山友達の山浦氏に無事合流した。

 9時すぎ、レンタカーの緑色のオペルステーションワゴンに荷物をつみ、さあ、出発だ。いきなり右側通行で大丈夫かあ?という不安を隠せない同乗者たちをしり目に、杉山氏は平然と運転。ただ、方向指示機とワイパーが左右逆なため、ときどき不必要にワイパーが動く。

 すぐにBrenner峠越えのアウトバーンに入る。道はそれほど混んでいない。最初の休憩所に入ってみる。でかいマクドナルドがあるが、トイレに入ろうとするとチップを要求される。え〜っ、小銭ないんだけど。

 自動両替機を見つけて山浦さんがさっそく一万円札を入れてみる。おおっ、シリングの札と硬貨が!便利だなー。率も悪くない。この時点で私たちは、こういうのがきっと至る所にあるんだと確信し、両替は楽勝だと思ったのだが、これは大変に甘かったのである。

 ここで杉山氏が買ったペットボトル飲料"GreenTea"が極めつけの珍品だった。日本人は全員ぶっ飛ぶ味で、緑茶とは似ても似つかないが、冷たい甘いお茶にレモンを入れると(やったことないが)あんな味になるのかもしれない。こちらではミネラル水はどこでも売っているがそれ以外に甘くない飲み物は皆無で、日本でも昔はそうだったようにコーラと、ファンタとかスプライトばっかりだ。そのなかで"GreenTea"は善戦しているらしく、あちこちで見かけた。ヨーロッパの皆さん、あれは断じてグリーンティではないのですよー。

 このころから雲行きがあやしくなり、ブレンナー峠に登るにつれて、雨が激しくなってきた。雷を伴う集中豪雨という感じで、いくらワイパーを動かしても前方は真っ白、そこをとても正気とは思えない速度で飛ばしていく車、こっちの人達は命が惜しくないのかなあ。

 峠を下ると、雨は普通の降り方になってきたが、あまり景色を楽しむという雰囲気ではない。それにしても、対向車線がひどく混んできた。あとで聞いたところによると、バカンス帰り車で土曜日の午前中から渋滞するのだとのこと。一週間後、私たちもこの帰り渋滞に巻き込まれるのだが、そうとは知らず、ただ眺めていた。

 携帯が鳴った。オランダからドイツを経てオーストリアに向かっている村松氏からだ。「峠はすごい雨でしたよ」と伝える。

 この天気では早く目的地に向かおうということになる。でもそれがなかなか難しい。はじめての道だし、標識も全部外国語だ(当り前)。どこの出口でおりたらよいのかよくわからないまま、いつのまにかオーストリアからイタリアに入って、最初の大きな町、Bolzanoまで来てしまう。このあたりではイタリア語とドイツ語の名前が並記されていて、それが一層理解を妨げる感じだ。雨のなか、何枚もの地図を車内でひろげ、行ったり来たりして、やっと正しい方向に走りはじめると、もうお昼である。

 Brixenという町で昼食にする。こういう小規模な町は、駐車場を見つけるのが大変だ。やっと車をとめてレストランに入る。全員イタリアのレストランは初めてなのである。その店はジモティらしいお兄さんがたくさんいた。私たちは日本人の証明のようにスパゲッティを頼む。ついでにワインも注文した。店はどうやら夫婦だけでやっていて、旦那さんが調理、奥さんがサービスなんだろう。それにしては客も多いし忙しそうだ。きっと夜は従業員も雇っているんだろうと思う。

なんと氷の入ったワインであった

 スパゲティはしっかりした塩味の地元ぽい味?で量も多く美味だった。ワインも氷入りのわりにおいしかった。エスプレッソを飲み、一人1000円くらいだろうか。

*レストラン前で

 満腹だし、店を出ると雨も止んでいる。車に戻ると...なんと、後から来た車が突っ込んで止めてあり、動きがとれない状態に! しかも懸命に切り返しているときバンパーをこすってしまった! くっそー、何だよと思っているところへ、やってきたのは同じ店で食事していたおばちゃん二人連れ。自分たちが悪いとは全く気付いておらず陽気に「先に出ていいわよ」と手を振っている...  ま、いいか.... ここはイタリアだもんね。

 そこから先は順調に目的地Sillianに着く。途中、イタリア/オールトリアの国境があるので皆パスポートを準備するが、ゲートはあるものの廃虚のように無人で何のチェックもなくそのまま通り抜けた。ちょっと拍子抜け。杉山隊によれば、前夜インスブルック到着が夜遅かったため?空港でもチェックがなかったらしい。まだ日本を出た記録しかパスポートにないんですよ、と山浦さんが嘆く。

 しかし宿泊する「リゾート村」はどこにあるのだろう?と捜していると、あっという間に町を通り抜けてしまう。それくらいちっちゃな町だ。駅前に駐車し、ツーリストインフォメーション(どこにでもある旅行者用の案内所、とても便利)に入って聞くと、町はずれというより隣の町との境目あたりのようだ。場所もわかってほっとしたので、Sparで買い物していこうぜということになる。朝食用のパンとヨーグルトとトマト、いろいろ買い込み、よしこれで万全だ、宿泊地に向かう。

*ハムを買う山浦氏 量り売りで、その場でスライスしてくれる。おいしかったですねー。

 目的の村は、チロル風の建物がならぶ気持ちよさそうなところだった。目の前の山の上には私たちがSillian城と呼んでいた古い僧院のような建物がある。受付の建物の前で車を下りると、なんと、村松一家とばったり!ひっさしぶりー(慶太郎ははじめまして)

村松初代会長、慶太郎くん、たい子さん

 こんなヨーロッパの片田舎で星見会OBが5人も集っているのかと思うとその密度に笑ってしまう。

 無事手続きもすみ、部屋へ行く。一軒の建物は2階建てで、だいたいそこを4家族で使うようになっている。われわれ(杉山、山浦、北沢、ムシ)は2階の、日本でいう2DKの間取りで、片方の寝室がダブルベッドだったので自動的に部屋割は決まった(もし男ばっかりだったらどうするんだろう、きっとヨーロッパでは(ふつうは)同性だけで旅行はしないんだろう)。

 備品などを点検する。コーヒーメーカーがあるので、あとで挽いた豆を買ってこようとか、えー、シャワーしかないよーとか、とりあえずビール飲みませんかと言っているところへ村松氏が見に来た。村松一家の部屋は少し奥にある建物の一階で、今回ご長女の舞ちゃんが参加しなかったため、小さめの部屋である。夕食は適当にレストランを捜すことにし、集合時間を決める。

 さて、私はなにはさておき洗濯がしたいのである。北沢隊は日本を出てからすでに一週間を越え、その間靴下を洗った程度で、もう着る服もパンツもない。受付で洗濯機の場所を聞き、勇んで見にゆくと、一回につき、洗濯50シリング、乾燥50シリングのマシンだった。なんと一回千円かかる!暴利じゃ!しかししようがない。

 近くのSparへコーヒー豆とフィルターの買い出しにゆく。どこの国でもスーパーは面白いし、くつろげる気がする。レジで10シリング硬貨に両替もしてもらい、ムシは急いで洗濯に。洗濯機の表示が全部ドイツ語で、全然わからにゃいが、とにかく洗濯ものを全部つっこんでお金を入れると動きはじめた。頼むぞー、うまくいかないと明日着るものがないんだからね。結局乾燥が少し甘かったものの、何とか洗い終わった。

 部屋に戻ると杉山/山浦組も洗濯を(手洗いで)素早く済ませていた。冷えた缶ビールで乾杯する。ビールはくせがなく、飲みやすい。

 6時、受付前に行くと、村松一家は買い出しに出遅れたので(土曜日は田舎は店が早く閉まる)道道スーパーを捜すという。国境の向こうで小さなスーパーを見つけたが、すでに閉店5分前で、すごいスピードで水や食糧を買わなければならなかった。

 さて、夕食。結局、S. Candidoという小さな町の街道沿いのレストランに入る。この店は味はそこそこながら、信じられないほど安く、コースにサラダバー食べ放題が付いていてこれが野菜の補給に断然役立つ。山盛りのルッコラ(ごまの味がする菜っ葉)をがつがつ食べた。飲み物(ビールとワイン)を入れても一人2000円以下だったと思う。

このピザはいまいち(たい子)いやここは学食並みに安い(幸雄)ボク鼻血が出ちゃったんだ(慶太郎)

 夕食後、宿へ戻り、村松氏から「ドロミテの歩き方」について指南を受けた。見所多すぎ、日食もあるし、どこまで消化できるかなという感じだ。

 続きは2 霧のミズリナ湖へ(工事中)


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