5月2日(土)二日目

昨晩は山菜天婦羅を満喫し、珍しく風がほとんど吹かず、気温も大して下がらず快適にテントで睡眠に入ったのだが、夜半過ぎからかなりの風が出てきた。テント内にぶらさげていたメガネも落ちてしまった。蛍光燈も念のため外して少しでもテントの負担を軽くしておこうと考えた。

かなり早くから目が覚めていたが、やはり前日の完徹はきつく、体を起こすのが面倒だ。そうは言っても今日は温泉巡りだ。いつまで寝ている訳にはいかない。とりあえず酸ヶ湯の千人風呂に入ろう。おっと、その前に朝食だ。

朝食はインスタントラーメンだ。サッポロ一番しょうゆ味にした。前日買っておいたモヤシ,エノキダケに行動食として用意しておいた魚肉ソーセージも入れて、なかなか豪華である。ちょっとクーラーボックスから取り出す際に、ビールに手が出てしまったのは佐藤君だ。当然他の二人も飲む事になる。いつもは朝食を食べない佐藤君もビールの勢いか多少は食べれたようだ。(ちなみに前日あじゃらPAでの朝食は佐藤君がウィダーインゼリー,大泉君はいなり寿司,私がカツ丼だった)

八甲田が初めての佐藤君のためにも一度は入っておこうと酸ヶ湯の千人風呂へ行く。(税込み420円)朝から結構混んでいる。また湯船に男女エリアが設けてあり、圧倒的に数の多い男性には結構窮屈である。レイアウトも全く変わらず昔からのままだ。

風呂上がりに掲示板を見ると、今日は風も強いため八甲田ロープウェイも動いていない。となると銅像茶屋に行って遭難慰霊の銅像を見るのが順当だ。早速出発だ。銅像茶屋付近は道のすぐそばまで前岳から滑って来られるのが例年の状態だか、今年は違った。林の中の雪すらところどころに少し見える程度で、全然つながっていない。また前岳だって土が露出している部分の方が多い。こりゃあ駄目だ。

銅像まで数分歩き証拠写真を撮る。ライカM6チタンに望遠レンズ(多分135ミリ)を付けて三脚のまま持ち歩いているおじさんがいた。これまで気が付かなかったが、銅像茶屋には遭難資料館が併設されている。入場料金200円/人である。入ると東宝映画「八甲田山」がビデオで流れ、当時の文書や装備,写真が展示されている。写真や資料を真剣に見ていると悲惨を通り越したような凄絶さが感じられる。一見の価値はあると思う。

茶屋にいろいろの土産が置いてあったが、土産物より一皿525円の味噌おでんが気になった。結局3皿注文し、またまたビールで乾杯、日本酒も多少いただいた。量も適当でなかなか美味かった。これを昼食としておこう。

ここで、これだけ雪が少なければいつもの年は全く行くことの出来ない田代元湯へ行けるのではないかと思い、早速出発し、田代元湯バス停の脇から続く道に入った。車で行けるところまで進むと数台の車が止めてあった。地図をたよりに歩き始めた。10分程で川に出た。吊り橋を渡ると田代元湯だ。ぼろぼろの廃屋があり中には湯船がある。全く掃除していない状態のため入る気になれない。その先には川縁に露天風呂があった。ここは普通に入れそうだ。また少し先にはさっきよりましな状態のやまだ旅館と書いてある建物があった。中には湯船がありこれなら入れる。またそのそばにはいきなり掘ってある湯船があり、お湯はすくなかったが本を読みながら入っている男性がいた。

われわれは川縁の露天風呂に入った。ちょっとぬるめだがゆっくり入ることができた。ヒメハルゼミの声も聞こえ、周辺の木々は新緑である。ビールを持ってこなかったのが悔やまれた。いっしょに入った地元の男性に聞くと昨日この露天風呂を掃除したとの事。有り難いことである。田代元湯は数年前に廃業となって、いまは入りたい人が掃除をしなければならないらしい。確かに車で気軽に行ける場所じゃないので営業は難しいだろう。まあスキーは出来なくてもこのような初めて体験が出来るのも一興である。(当然タダ)

再び、車に乗り箒場平へ行った。ここも雪はほとんど無い。雛岳を見ても滑れるような斜面は全く無い。風が強く、雨混じりとなってきた。ここの茶屋にも何度かお世話になったことがあったが、今回は覗いただけ。窓にたくさんのカメムシがいたのが印象に残った。

ここから谷地温泉方面へ向かう。滑ることが出来ないという高田大岳の大斜面を確認しよう。いつもは頂上直下からきれいに真っ白な末広がりの三角形がみえるのだが、今年は上部の三分の一は三角だが、左に長い足のあるクラゲ状態となっている。これじゃあやっぱり滑れない。で、睡蓮沼まで行ってみた。いつもは道の両側にびっしりと駐車されているのが、ほんの数台。バス停からほんのちょっと入るとなんと睡蓮沼全景が見渡せるのだ。いつもだったら完全に雪に閉ざされて、テントが林立しているはずである。やっぱり地球温暖化は進んでいるんだろうか。来年はどうかな。70年間に1回が71年間に2回目なんていやだよ。

これで八甲田とはお別れだ。で、私の大好きな蔦温泉に向かった。雨はかなり強くなってきた。蔦温泉は透明でやわらかな感じのお湯で、木でできた湯船もなかなか良い。以外と空いていた。(入浴料400円/人)入り口からすぐの右手の岩魚入り水槽付きの浴室と、奥の最近改装された浴室がある。(女性は確か奥の方だけだった)我々は奥の方に入った。昔と少し違ってドアやシャワーがあり、オープンな感じが消えたのはちょっと残念。でもお湯は以前と変わらず、透明で良い香りのままだ。少し湯疲れはしたが、岩魚入り水槽付き浴室の方も入ろうとしたら、かなり混んできたのでパスした。ここでもまたビールで水分補給を行う。

それから、奥入瀬観光となった。渓流とはいってもすぐ脇を国道が通り、観光バス等車がバンバン走っているのは興ざめだ。太古の昔にここを沢登りしたら絶景だったろうと想像をたくましくするだけだ。ぜんぜん降りずに通り過ぎてしまった。で、後の楽しみは十和田IC近くの「錦」である。寿司と釜飯をメインとして稲庭うどんもおいしい店だ。確か17時に 開店だったので、ちょうど良い時間だ。

「錦」に向かう途中、十和田湖を眺める観湖台に立ち寄る。雨をしのぐ屋根もあるのだが風が強くてあまり役には立たない。結構寒いのでそそくさと車に戻った。遊覧船も動いていたが、この天気ではあんまり気持ち良くないだろう。ここからは脇目も振らずひた走る。

17時ちょっと前に「錦」に着いてしまった。ところが既に開いていた。16時から営業して いるとメニューにあった。これからはもっと早くこよう。いきなり食事もつまらないので、ちょっとおつまみ&ビールでのどを潤そうといくつか注文した。結構おいしい。やっぱりお酒もちょっとといっているうちに1時間半はあっという間に過ぎた。

ここで今後の作戦会議を行った。いくらなんでも全くスキーをやらないのはもったいない。 月山に行けば雪はあるだろう。八甲田で会った他のパーティもそんなことを言っていた。明日までは天気が悪そうなので、明日の夕方に月山に着くように南下しようという結論に達した。今日はどこかのSAにテントでも張って寝てしまおう。

で、メーンイベントの寿司と稲庭うどんだ。さすがに食べきる自信が無いので、寿司の握りを小さ目にしてもらった。それでも結構きつい。稲庭うどんまでなんとか食べきることはで きたが、こりゃー食べ過ぎだ。動くのも苦しい。来年は多少考えなくてはならないか。酔い 冷ましも兼ねてゆっくり休憩しよう。

出発は19時半前だった。ここからはお土産を各SAで仕入れていくのだ。まず高速に乗っ てすぐの花輪SA。半分シャッターを閉めた売店を下から覗き込んでいると、売り子のお兄 さんが声を掛けてくれたので「いぶりがっこは置いてありますか?」と聞くと、「ありますよ。」の返事。二種類あったのでどちらも購入。両方食べて来年は美味かったメーカーの物を買うのだ。ついでに「稲庭うどんはありますか。」と聞くと、これもあった。即購入する。以前は長者原SAにしか置いてなかったのだが、やっぱり美味い物はみんなわかるんだね。

続いて岩手山SAだ。ここは花輪SAより大きく終夜営業らしい。ここではリンゴスナックを車内でのおやつ用として購入。何種類かあったが、重さ当たりの価格が最も安いのが、一 番小さな袋タイプだった。青リンゴと赤リンゴの2種類を買った。これならお腹一杯でも少しは食べられる。食べ比べたが、私にはほとんど差がわからなかった。

次は紫波SA。ここでも「いぶりがっこ」を買った。花輪SAと違うメーカーだ。また包装にいぶりがっこと書いてある。商標登録はあまりに一般的なので無理だろう。ところで皆さん「いぶりがっこ」をご存知ですか。沢庵の一種で燻す(要するに薫製)工程がある漬物だ。これが歯ごたえがあって香りがなんともいえずにご飯や酒に合うのだ。東京駅や上野駅で 東北物産展みたいなものをやる時にはきっと売っています。ぜひ一度お試しあれ。

そろそろネグラを捜さなければならない。地図をしみじみ見ていると、秋田道に入って最初の錦秋湖SAに錦秋湖温泉オアシス館というのが隣接しており利用可能となっていた。このまま温泉に入って休憩室で寝ることができたら最高だな、というわけで少し遠回りになるけど秋田道に入り錦秋湖SAに向かった。

錦秋湖SAに着いたが、さすがに夜の利用は無理だった。しかしこのSAは普通の駐車場の他に、緑陰駐車場という木陰の駐車場がある。雨は降っているが、水銀灯の下で寝るよりずっと良い。雨の中さっとテントを張り、一応宴会体制は出来た。少し飲み始めたが錦での食べ過ぎのせいか、私はいまいち調子が出ないので、早々に寝に入ってしまった。

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