皆既日食 ハンガリー編

走行距離往復1000キロ、ああ、アウトバーン20時間


国境で冷や汗 より続く

いよいよ皆既??

 ハンガリーに入ると、さすがに道はがらすき。そのうちにぱっと陽がさしてきた! いつもはお肌の大敵、紫外線だが、今日は大歓迎である。あの太陽がなくなるのねっ。なくなるんぢゃないよ、月のかげに隠れるんだってば!車中は大騒ぎ。

 いるいる、道の脇にうようよと、日食目当ての人々が。

 最初に入ったわき道のところで、まず待機する。みな、この日のために持ってきた三脚をたて、カメラを据え付ける。ようし、と空を見上げると、いつのまにか雲が近くなってきている。うーん、どうせなら雲にはご遠慮願いたい。移動だ。

 雲の動きを見ながら、小さな町を抜ける。地図にもないような村だが、まるで活気というものがなく、誰も歩いていない。まるで日食を恐れているみたいだ。店もないし、これが旧東側ってやつなのか?

 やがて広い畑に出る。空は快晴だ。よし、ここにしよう。第一接触までもうわずかしかない(とそのときは思っていた)。

*誰かが傘を干している..

セッティングする人々

 ふたたび機材を下ろす。さて、泣いても笑ってもいよいよだ。

ハンガリーの大平原に青い花

 ねえ、まだ丸いよ。いつになったら欠けるの? おかしーなー、絶対もう過ぎてる... もう一度計算してみよう。イギリスの時間は... あっ、サマータイム!を入れてちゃいけないんじゃないの? でも『○カイ○ォッチャー』によれば.... やっぱり地元の新聞の時間が正しくて、自分たちは1時間はやく見積もってたということに気付くまで一騒動あった。そしてその間にも、また穏やかな空に薄雲が広がりだしていた。

 よし、ぎりぎりまで晴れをめざすぞ。あと10分だけ移動だ。そう決めたとき、すでに太陽は丸くはなくなっていた。

ピンホールあそび

 こうして私たちが最後にたどりついた場所は、人っこひとり他にはいない、広大なひまわり畑のなかの一本道だった。さっきまでの場所は、まだ国境警備の軍人なのか、迷彩服の人間が、自転車やジープで巡回しているような場所だったが、ここはもはやそれもない。

村の方向 でも誰も来なかった

 高いとこが好きなムシと村松慶太郎君は、ひまわり畑の見張り台?の上にのぼり、そこで皆既を待つことにする。

見張り台から

あたりはひまわりだけ

 その瞬間が近づくにつれて、どんどん気温が下がる、薄暗くなる、鳥がさわぐ、などの「日食現象」がますます濃くなってきた。ここまでは金環食でも経験済みだが、皆既は皆はじめて。どうなるのか、どきどきする。

 そして、    あああーーー。これが、ダイヤモンドリングなのか、そして、そして、

皆既焼け?

 皆既だー! 急に自分の声が講堂にでもいるように響く。ここだけ空気が冷えて濃くなっているせいだ。ひえー。

 あの薄雲がちょっとかかってしまったのだが、黒い太陽、丸く広がったコロナ、肉眼でもはっきり見えるほど大きなプロミネンスがちりばめられて、あっ、左下の輝くものは、

金星です。

★画像は(*印:杉山氏撮影を除き)すべてリコーデジタルカメラDC-2E、ノーマルモード、自動、無固定にて撮影。

 そして、再度ダイヤモンドリングが現われると、皆既は終わった。終わってしまうと短く感じたが、その間は、永遠に続くのではないかと思われた。

 うーん、すごかった。としか言えない。一生の感動を胸に(覚えているよね?>慶太郎)われわれはまだ欠けている太陽を後にしたのである。

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