前置き(言い訳?)が長くなりますが...

遠くに出かけず自宅で天体写真の撮影を楽しもうと思うと、どうしても「光害」問題への対策という課題に突き当たります。
街灯や工場、商店などの照明が夜空を明るくしてしまうので、微かな天体の光を見えなくしてしまう問題にどう対抗するかという課題です。

一つの方法として、光害源となる光(の中の特定の輝線)をカットして撮影するという対策がありますが、最近は蛍光灯や水銀灯、ナトリウムランプのような特定の輝線を持つ光源ではなく LED照明のような幅広い波長分布を持つ光源が普及して対策が難しくなっています。

もう一つの方法はそれと逆のアプローチで、撮影対象からくる光のうちの特定の輝線だけを通すフィルターで撮影するというものです。

これまで、後者の方法、つまり手持ちのデジタル一眼レフカメラに Hαフィルターを入れて通常のカメラレンズと組み合わせて撮影(結果は真っ赤なカラーの単色画像)し、RGBのうちの Rチャネルのデータだけを抽出してモノクロ写真として仕上げていました。

この方法だと、カラーセンサーの各色の画素(R + G(×2) + B)のうちの Rだけのデータなので実質的な画素数は元の 1/4になってしまい解像度は落ちてしまいますし、感覚的にもとても非効率です。
どうせモノクロデータしか扱わないのであれば、センサー上の全部の画素が明るさの情報だけをとらえるモノクロ専用カメラを使った方が効率的です。

というわけで、しばらく機材に散財していなくてお小遣いが少し溜まってきたので、モノクロ専用の CMOSカメラに手を出してしまいました。
どうせなら熱ノイズを軽減できる冷却タイプをと欲張り、いくつかの選択肢の中から ZWO ASI2600MM Proという APS-Cサイズの機種を選びました。

レンズはこれまで同様、Nikkor 180mm F2.8EDというオールドレンズです。
オールドレンズとはいえ、これまで Hα撮影で使用してきて開放でも十分のシャープな像を結んでくれ、しかも写野の広さが好みのレンジになる、とてもいいレンズです。
カメラのセンサーサイズを、マイクロフォーサーズではなく APS-Cにしたのも、このレンズを使い続けたかったから。

必要になるパーツをあれこれ探して、思い切ってポチッたのが 7月11日で、翌日にはもう手元に来ていました。恐るべし。(笑)

そしてなんともいいタイミングで 7月17日に東海地方に梅雨明け宣言が出て、その夜はほぼ一晩中、素晴らしい快晴となったので、ファーストライトを迎えました。

ファーストターゲットは NGC7000(北アメリカ星雲)です。

撮影にはノートPCとキャプチャソフトが必要になりますが、惑星撮影で使っている FireCaptureではなぜかカメラを認識してくれないので、世の中で広く使われている SharCapをインストールして撮影開始。
いわゆるカメラとは勝手が違うので、なかなか思うような操作ができないし、感度に相当する gainをいくつに設定すればいいのかも確証がないまま手探り(ヤマ勘)で撮影をしました。

データは FITSで吐き出されるので、画像処理は Stella Imageに喰わせる速度はいわゆる Camera Rawより速く快適。
ただしコンポジットの位置合わせ処理にはかなり時間を要します。(コンポジット自体は単色のせいもあって短時間で終わりますが)

どうにか処理を終えてみると、いい加減な条件で撮ったにもかかわらず、やはりシャープで滑らか。特にデジタル一眼での撮影よりも微光星が小さくなるので、星の明るさのメリハリが出て画面全体がうるさくならずにすみます。
(実際の画像はこちら→ https://www.carina.gr.jp/~yamane/Astro/Gallery/20210717.html )

これからしばらく、「画質を維持したまま、赤道儀がノータッチで追尾できる範囲内で、できるだけ総露光時間を短く」という欲張った条件を探っていく予定です。
そちらが固まったら、これまでデジタル一眼レフで撮ってきた対象たちを撮りなおしていきたいと思います。


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