いよいよ皆既日食を初体験

予定通りの時刻に部分日食が始まる。

部分食はこれまで何回か見たこともあり、今回は全経過の連続写真を撮る予定もないので、しばらくは暑さの中、水分補給をしたり皆既中の手順を再確認したりしながら、淡々と時刻は過ぎていく。その間にもうろこ雲の濃淡で絶えず太陽の明るさが変化し、フィルターをつけたり外したりしながら位置確認を行って極軸の設置精度を確かめる。わずかに南方向へのズレが出るが、皆既の時間程度であれば問題ない程度の誤差であることを確認し、少しほっとする。

皆既 30分前の声(ツアースタッフの方だと思うが、自分で時計を見ずに撮影に集中でき、とてもありがたかった)を聞くころから、予定よりは少し早かったが節電のため停止してあった赤道儀の追尾を再開し、デジタル一眼カメラ 2台(Nikon D90 & D70s)、ビデオカメラ、ノートPCの電源を次々に投入し、最終動作確認を行う。

皆既 5分前の声を聞くころ、シャドウバンド撮影用のビデオの録画を開始し、D90の動画モードでも撮影を開始。雲の影響で陽光は弱々しく、地面に広げたシャドウバンド確認用のシートには何も映っていない。HDではないビデオカメラの解像度では望みは薄いが、もしかしたら D90の動画なら何か写るかもしれないと考え、D90での動画撮影は予定通り行った。(結局なにも写らなかった。)

そうこうしているうちに皆既 1分前のコール。

あわてて D90の動画録画を切り上げ、フィルターを外して、ダイアモンドリングの手動連写に備える。一方、ビデオのほうはそのまま録画を継続する。(フィルタを外すのを忘れていた)

第二接触にむけたカウントダウンの声とともに周囲が急速に暗くなり、瞬間的にダイアモンドリング、そして鮮やかなピンク色の彩層を肉眼で見ながら、レリーズケーブルを使用して手動でシャッターを切り続ける。(雲で減光されてダイアモンドリングや彩層は写せなかった。)

そして、皆既が始まったころに D90を PCと接続し、Mモードに切り替えてから自動撮影プログラムを開始。しかしモード切替ダイヤルの位置がきちんとMモードになっておらず、ストロボが光ってしまったので、即座に自動撮影を中断してモードをきちんと確認後、自動撮影を再開。何発かストロボを光らせてしまい周囲に迷惑をかけてしまったかも...

自動撮影が順調に数コマ進んだことを確認してから赤道儀から離れ、D70sで日食焼けなどの周囲の状況のスナップ撮影を開始。皆既中に 2台のスチルカメラを使いつつも、周囲の状況を肉眼でも十分に観察できるのは自動撮影の大きな恩恵だと実感する。

しかし、首には小さな双眼鏡を提げていたのに、それを使って眺めることをすっかり忘れてしまっていた。また、ビデオカメラのフィルターを外すのも忘れていて、途中で外した。雲による大きな光量変化という予定外の状況の中で、それなり冷静に一つ一つをこなしていたつもりだったが、やはりパニックを起こしていたのだろう。

そうこうしているうちに、雲がどんどん厚くなってしまう。本来であれば、コロナの流線など初体験の現象が見えるはずなのだが、雲のせいで内部コロナがリング状に輝いているのを確認するのが精一杯。第三接触のころには太陽は完全に見えなくなってしまった。