オートガイダーの選択ミス

知らないというのは悲しいもので、オートガイダーとしてはとにかく価格の安かった ToupTek GCMOS01200KMAを選んだ。迷走はここから始まった。

販売店の商品情報で見る限り、(Windowsベースの)ASCOMを介して動くと書かれていたが、Linuxではどうすれば使えるかは書かれていなかった。しかし、Linuxで動くものでも書かれていない事はよくある事だし、詳細情報のところには、利用可能なOSは Windows 7/8/10と Linuxと書かれていたからすっかり油断して、勝手に

Linux版のドライバが提供されていて PHD2 guidingからも使えるんだろう

と思っていた。

また、Stick PCにプレインストールされた Ubuntu 14.04LTSでも、PHD2 guidingのソースからのインストールには何も問題はなく、実にあっけなく動かすことはできた。しかし...

PHD2のカメラ選択肢には ToupTekの製品はない

ToupTekだけではなく、妙に選択肢が少ない。

インストール時に何かオプションの指定でも必要なのかと思い、あわててソースコードを眺め始めるが、ASIとか QHYCCD、ZWOなどの有名どころ用と思われるファイルは見つかるものの ToupTekらしき名前はない。

結局、Windows版では ASCOMのドライバ層で機種の差を吸収しているということになるので、Linux版 ASCOMとも言える INDI Libraryでドライバが提供されているかどうか、という話になる。

INDI libraryのインストールと挫折

それなら、ということで INDIのインストールを始めることにする。

ネットで情報を漁ると、Ubuntuの場合バイナリパッケージがあって、aptで簡単にインストールできるらしいことが判明。喜び勇んで

# apt-get indi-full

を実行してみるが、そんなもんねーよ、とつれないお返事。 :-(

不思議に思いつつも、仕方ないのソースからインストールすることにして、ソースをgetし展開、さらに念のため全体を grepして ToupTekという言葉があるかどうか探してみるが見つからない...事ここに至ってようやく、

どうやら ToupTekのカメラは INDIでサポートされていないらしい

ということに気づいた。(遅すぎ)

それでも、とにかく世界は広いのでもしかしたら誰か奇特な人がドライバを書いてくれているかも、という淡い期待を胸にネットを漁りまくるが、

http://indilib.org/forum/ccds-dslrs/1625-touptek-gcmos-driver.html

くらいしか情報が見つけられなかった。

こんな時に自力でちゃちゃっとドライバが書ければカッコいいのだが、そんな力量も時間もないので、泣く泣く ToupTekの次に価格の安かった QHY 5L-II-Mを入手して仕切り直すことにした。

もちろん念のため PHD2のソースを grepし、QHY 5L-IIという文字があることは確認してから入手したのだが...(まだまだ迷走は続く)

 

(余談その1)そもそも Linux対応とは何を意味しているのか

完全に愚痴レベルの話になってしまうが...

たしかに ToupTekのサポートサイトにはSDKが提供されている。しかし、これはデバイスドライバという形ではなく、規定されている APIを通じて C/C++からアクセスできるというライブラリだった。

また、Linux版や Mac版のToupViewというアプリケーションも提供されていて画面のキャプチャなどもできる。そういう意味ではたしかにサポートされている。

ただし、サポートサイトにあるものは 2015年のタイムスタンプで更新されておらず、実際に GCMOS01200KMAで動かしてみると認識されず動かなかったので一度はハードウェア故障を疑った。

結局あれこれ探し回って

https://www.firstlightoptics.com/touptek-cameras/touptek-mono-imaging-and-guide-camera-gcmos01200kpa.html

を見つけてようやくハードウェアには故障がないことを確認できたという状況だった。

そもそもの思い込みで、「サポートされている」というのはデバイスドライバが提供されていることだと思い込み、デバイスドライバで認識されていれば PHD2や INDIのようなアプリケーションからは使えるという構造だと思っていた自分が悪いのだが、やはりこんな状態でサポートされていると言えるのか、モヤモヤする。

 

(余談その2) ToupTek GCMOS01200KMAは Windows版 PHD2で ASCOMを介さずに使えるかも?

QHY 5L-II-Mを Linux版 PHD2で INDIを介してひと通り動作させられるようになった後、やはり ToupTek GCMOS01200KMAのことが気になり、さらに情報収集しているうちに、どうも ToupTek GCMOS01200KMAはAltair GPCAMと同じメーカーの製品(OEM品)なのではないかという情報にたどりつく。

https://www.cloudynights.com/topic/544430-cheap-imx224-sensor-camera/

さらに、GCMOS01200KMAがサポートされている oaCaptureのソースコードを見ると、./liboacam/Altairoacam.cの 910行目あたりには GCMOS01200KMAを GPCAMMT9M034Mとみなしているっぽいコードがある。

ダメもとで実際に Windows デスクトップPCに PHD2をインストールし、"Altair Camera"を選択して動かしてみると、ふつうに認識されてダークライブラリの取得もできた。

赤道儀との接続や制御ができるのかは WindowsのノートPCを持っていないので確認していないが、もしどなたか試してみてちゃんと使えたら教えてください。(笑)

 

2018/04/18 追記

PHD guidingではないが、FireCaptureでは ToupTek GCMOS01200KMAが Altair GPCAMMT9M034Mとして認識され、正常にキャプチャできた。使用したドライバは協栄の CDに入っている DShow/TWAINだけで、ASCOM関連のドライバは不要だった。

ただし、ToupTekのサイトからダウンロードしたもの(古い)ではそもそもカメラが認識されなかった。

(余談その3) INDIに Altair GPCAMドライバはある?

もし ToupTek GCMOS01200KMAが Altair GPCAMとみなして動かせる可能性があるなら、INDIに Altair GPCAMドライバがあれば無駄にならずにすむという話になるので期待してあれこれ探してみたが、開発に着手している人はいるらしいが、まだ公開はされていないらしい。

http://www.indilib.org/forum/ccds-dslrs/1994-altair-astro-gpcam2.html

他力本願ではあるが、自分よりはずっと技術がありそうな人なので、公開を楽しみに待ってみる。

(追記) INDIに ToupTek / Altairドライバが増えてます

久しぶりに INDIのサイトを見てみたら、サポートされてるカメラが増えていて、その中に

  • ToupTek --- indi_toupcam_ccd
  • Altair --- indi_altaircam_ccd

がある!!

早速、https://www.indilib.org/devices/ccds/toupcam-cameras.html を参考に、

sudo add-apt-repository ppa:mutlaqja/ppa
sudo apt-get update
sudo apt-get install indi-toupcam

を実行してインストールはおしまい。

パッケージ名は indi-toupcamなのに、indiserverの引数となるドライバ名は indi_toupcam_ccd というあたりが紛らわしいので要注意。

このスティックPCでは QHYと ToupTekの両方を使い分けられるように、/etc/rc.local への記述を以下のように して、LISTENポート(7624/tcpがデフォルトです)を別々にしたインスタンスを起動するようにした。

#
#  start INDI server instances on diferent port
#
su yamane -c 'indiserver -p 7624 -v indi_qhy_ccd     > /dev/null 2>&1 &'
su yamane -c 'indiserver -p 7625 -v indi_toupcam_ccd > /dev/null 2>&1 &'

最初、-pオプションをドライバ名より後ろに書いてちっとも認識されず悩んだのは内緒。 ^^;