現地 3日目

主力隊は 2日目の深夜(というかほぼ明け方)にようやく到着されました。
そのままグリーンフラッシュを見にクーナバラブランの空港まで行かれましたが、私は徹夜の撮影疲れでとても体力が続きそうもなかったのでパスして爆睡しました。

睡眠の前には毎回、カメラ 2台のバッテリ(4個)やポタ赤駆動用の USBモバイルバッテリ(2個)の充電を忘れないように仕掛けていました。
オーストラリアの ACコンセントは「ハ」の字型の O型プラグと呼ばれるもので電圧は 220Vです。
今回は変換プラグを2個持参し、それぞれを三又に分けて、その先で更に三又に分け、上記のバッテリ群とスマホの充電をしていました。充電器だけでも相当がさばる荷物になりますが、それでも今どきの機器は変圧器は不要なので重量面では助かります。

実は、他にも結露防止ヒーター用とオートガイダー用に USBモバイルバッテリを合わせて 3個持参していたのですが、2日目の晩に徹夜をしてみて非常に乾燥していたので、その後は結局ヒータは使わずに済みました。
また、念のため SkyMemo S用にオートガイダーも持参はしていましたが、空の状態が非常に良くてワンショットの露光時間を短めにすることができたので、結局使用せずに済ませることができました。
もし次回があるなら、モバイルバッテリはかなり数を減らすことができそうです。

さて、11時くらいに、とても朗らかな鳥の鳴き声(どうやらマグパイというカササギの仲間らしい)で目が覚めて、素晴らしい青空を眺めながらお風呂に入り、パンや野菜、果物、ヨーグルトなどの朝食をとった後は PCで前夜の収穫を確認しました。Stella Imageで軽く画像処理してみたり、MS-ICEでモザイクのつながり具合などをみて今夜の撮影スケジュールの微調整をします。

宿にはWiFiが飛んでいて、(速度は遅いものの)衛星経由と思しきインターネット回線も引かれているので自宅に VPNを張ってメイルの読み書きをしたりもできます。
こんな贅沢な時間の過ごし方をしてもいいんでしょうか。(笑)

午後にはたまり始めた洗濯もしました。
乾燥機までついた洗濯機が備え付けられているのですが、使ってみると一回の洗濯が終わるまで 3時間くらいかかるのにビックリ。改めて日本の家電の便利さに気づかされました。

夕食は Oさんが料理の腕をふるってくださいました。オージービーフのステーキです。
肉はふつうにスーパーでこんな↓感じで売られているものです。(Tボーンとフィレ)
私は脂の多い肉は苦手なのですが、赤身のしっかりしたお肉で最高でした。
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私以外の皆さんは食通でワインにとても詳しいのですが、私は雰囲気だけで十分に贅沢な気分を味わえて幸せでした。

そして夜

またも快晴の素晴らしい星空の下で撮影 & 観望三昧です。

撮影の方はオーストラリアに来る前から、同じ対象を 16枚ずつ撮ってコンポジットすることに決めていたので、構図を決めていったん露光を始めると軽く 30分以上はインターバルタイマーと赤道儀にお任せになるため 2台体制でも観望をする時間的な余裕はかなりあります。
それを見越して「双眼狂」の Oさんにお借りしてあったスワロフスキの8×42双眼鏡で天の川沿いに流すと、それはもう無数の星粒の間にうねる暗黒星雲や星雲や星団が次々に入ってきます。

それだけでも十分に贅沢な星見スタイルですが、ミルロイ天文台には主砲の 1m F8カセグレイン(赤道儀が故障中)の他にも観望会で使われている 30cm Ninja、40cm Ninja、50cmドブ、10cm双眼望遠鏡などの眼視用の大口径機がふんだんにあります。
また、遅れて到着した主力隊の Skさんは南天の NGC天体はすべて視認済みという強者で観望対象リストまで用意してくださっていましたので、撮影の合間に 3本のドブでいろいろと導入して見比べをさせていただくつもりでした。
しかし、前日までに構図の失敗やピンボケなどの失敗が重なっていて、月がどんどん大きくなる中で焦っていてついつい撮影に時間をとられてしまい、この日はほとんどドブでの観望はできませんでした。

この日撮影したのは、エータカリーナ星雲、みなみじゅうじ座とコールサック(暗黒星雲)、大小マゼラン雲の撮りなおしと、日本では撮影できない天の川沿いの星雲のアップでした。
また、明け方近くになると日本でいう冬の天の川に沿った対象が昇ってくるので、こちらも日本ではなかなか撮れないガム星雲を狙いました。

EtaCarinae_4042-4057_comp16.jpgmoz_Crux_4058-4074_x2.jpgmoz_Coalsack_2161-2191_x2.jpgIC2944_2145-2160_comp16.jpgIC4628_2235-2250_comp16.jpgSMC_2252-2266_comp15.jpgIC4592_2194-2207_comp15_noflat-2.jpgNGC6537-NGC6334_2217-2232_comp16.jpgLMC_4225-4240_comp16.jpgGum_4258-4263_comp6_Sequator.jpg

3晩目ともなると南天の方向感覚もだいぶなじんでくるので、極軸の設置や構図の決定などはずいぶんスムーズになり、個々の操作にも少し心の余裕が出てきますし、周りの状況の微妙な変化にも気がつくようになってきます。

例えば、一晩を通して撮影をしていると、濃い天の川が時間とともにだんだん西に傾き、夜半過ぎにいったん日本の春の夜のように天の川が全周にわたって地平線にはりつく時間帯が訪れます。
すると、驚くことにそれまでヘッドランプをつけなくても手元がかなり見えていたものがとても見にくくなります。これはまさに天の川による「星明り」の変化を感じているのだと思いますが、光害のひどい日本では高山に登ったとしてもまず体験することができない現象だと思います。
(高山で濃いガスにまかれた時に本当に暗い(いわゆる「鼻をつままれてもわからない」ほどの)闇を体験することで夜空全体からくる「星明り」は感じることはできますが、天の川の明かりの変化を感じることができたというのは大変な驚きでした。)

また、対日照自体は日本でも見られないことはないのですが、夕空の黄道光が天の川を横切り火星付近に広がる対日照を経由して東の空の黄道光にまで道のように連なる様子も今回のオーストラリアで初めて目にすることができました。
当然、黄道光は天の川を広角で納める際に非常に邪魔になったほどです。

ミルロイ天文台はクーナバラブランの街からは 10kmほど西にあり、東の空にはもちろんその光害があるので 100点満点の空とは言えないのかもしれませんが、それにしてもなんとも羨ましい夜空環境でした。
日本とオーストラリアでは国土の広さ(人口密度)が違いすぎるので簡単には言えないのですが、それにしても日本では灯りを夜空に漏らしすぎていると思います。